約 5,047,566 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1485.html
僅かな慢心、産まれた闇(後半) これはロッテが初めて直面する、己の意義・信念を揺さぶられる事態だ。 “奇襲”による戦意喪失とダメージもあって、反撃は精彩を欠いている。 何より機動力を最大の武器とするウィブリオが、その翼をやられる始末。 彼女の不利は火を見るより明らか……そう、前例がない程の逆境だった。 「その雷を放つ剣も、恐らく私達神姫の“心”に敏感なのだろうな」 「ぅ……ライナスト、どうしましたの?!出力が、上がらない……!」 『キュ、キュィッ!!?』 ロッテの“惑い”に、魔剣たるライナストも感づいたのだろう。能力を 十分に発揮出来ていない……いや、発揮させようとしない。フリッグは 僅かに改造された“ソードダンサー”を己の身に纏い、ロッテの射撃を 受ける。ダメージは通っているのだが、命中率も低く逆転には至らぬ! 「では此方も往くぞ……ふっ!!」 「きゃぅんっ!?う、うぅ……ウィブリオ……?!」 『キュ、キュゥ……』 「抗ってみせるのだ、ロッテ……せやぁっ!」 「ぐぅっ!?うう……つ、強い……!」 逆に、元より大剣を扱っていたフリッグは“ソードダンサー”を巧みに 操っている。何よりその剣には、迷いが感じ取れない。唯パワーのみを 頼るのではなく、己の全てを巨大なブレードに託しているのだ。故に、 小手先や装備だけではない、本当の“強さ”をフリッグは備えている。 太刀打ち出来ず満身創痍となったロッテに、彼女は白刃を突きつけた。 「……そろそろ良いか。“惑う剣”に付いて、問おう」 「き、聞く事……ですの?」 「如何にも。ロッテ、そなたは何の為に……誰が為に戦う?」 「それは、マイスターの為……ぁ……」 「そう言う事だ。言葉はさておき、今は本質を見失いかけている」 「……わたしは、わたしの為にしか戦っていない……ですの?」 わなわなと身を震わせて、今にも泣きそうな表情を見せるロッテ。それを 見たフリッグは上を……つまり、外部から観察している私達を見据えた。 そして、同じく哀しげな瞳で……語りかけてきたのだ。“大切な事”を。 「もっと踏み込めば……ロッテ、そしてその姉妹達よ」 『は、はいっ……!?』 「そなたらにとって主……“マイスター”とは何だ?」 『……ボクらの、マイスター……?』 「私にとって、私の主は存在の全てを賭けて支え、お仕えする方」 「わたし達にとって……」 「ならばそなたらの主、“マイスター”とは……誰だ?」 神姫は須く、一人のマスターの為に在る。だが、マスターをどう思うか? それは神姫自身が見つけ定義しなければならない、極めて重要な問題だ。 ……そしてそれは、マスターにも言える事だった。神姫をどう思うのか。 『……そして私にとって“この娘らは何か”とも言いたい訳だな?』 「左様です、槇野殿。惰性と一時の感情だけで進むには、限界がある」 『有無。現にロッテは、己の迷いを強く指摘されて……しまったな』 何時かはハッキリせねばならない、とは分かっていた。だが、その勇気は まだ私にはなかった。そして、ハッキリと求めぬ彼女らにも甘えていた。 何時までもそのままでなど、居られるはずはないのだ。なのに、なのに! ……弱さと脆さが、私達にあったのだ。とりわけ、私と最も長く居る娘。 「……自分でも気付かぬ内に、己に迷う。それが、刃を曇らせる」 「わ、わたしは……それでも負けたくないですのっ!!」 「ぐッ。ならば、己を見つめ直してほしい。鍛え直してほしい」 「きゃぅ……ッ!マイ、スター……」 ロッテ……彼女だからこそ、フリッグの“荒療治”に強く揺らいだのだ。 故に彼女は人間なら雫を零しているだろう、痛々しい表情で雷撃を放つ。 敢えてフリッグはそれを真正面から受け……その上で、ロッテを斬った。 『キュィ、キュィイッ!?』 「一週間程、待とう。その間に、ロッテ……そなたが何を見つけるか」 「いっしゅう、かん……」 「……私を揺さぶったあの強き娘が蘇る事を、私は望んでいるぞ」 『ノックダウン!!勝者、フリッグ!!』 ジャッジシステムの声が、無情にして無上の敗北を告げた。完敗だ……。 痛みと絶望故か、ロッテの意識はそのままブラックアウトしてしまった。 エントリーゲートを上昇してきた彼女を、私は即座に再起動させてやる。 だが目覚めても、その顔は迷いと嘆きに彩られ……笑みを見せなかった。 「……わたし、自分でも気付かない内に悪い娘になっていましたの?」 「悪い娘だなどと誰が言った。良き“心”だからこそ、迷うのだろう」 「嬉しいですの、マイスター……でも、少し放っといて下さいですの」 「……あの人は己に厳しく、そしてずっとボクらを見ていたからこそ」 「気付いていたんでしょうね、緩やかな異変に……気づけてよかった」 無論、何処かで食事などする気にはなれず……神姫センターを後にする。 その間もロッテは、私の胸ポケットに入り蹲ったままでいた。フリッグの 言葉を私も噛みしめて、考えて行かねばならぬ。何故なら恐らく、これを 越えた先には、何かがある。私はそう予感……いや、“確信”していた。 「じっくり考えるといい。何時でも、私達は側にいるのだからな」 「はいですの……マイスター。アルマお姉ちゃん、クララちゃん」 ──────大丈夫、貴女ならきっと見つけられるよ。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/15577.html
登録日:2010/03/13(土) 22 18 27 更新日:2024/08/10 Sat 18 53 54 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 KONAMI 1/12 12年秋アニメ 4mm穴 573 MMS アクションフィギュア アニメ化 コナミ バトルロンド フィギュア メカ娘 ロボ娘 天使型あーんばるがいいと思うの! 娘 改造 武装神姫 武装紳士 浅井真紀 紳士 美少女フィギュア 開いたり閉じたり 頑丈 魔改造 コナミデジタルエンターテイメントから発売されている美少女フィギュア及びそれを基にしたメディアミックスシリーズ。 概要 原型師、浅井真紀がデザインしたMMS(Multi Movable System)フィギュアと呼ばれる可動式素体にアーマーや武装などのパーツを取り付けたりして楽しむ。 まず特筆すべき点としてその素体の可動である。 神姫素体は限りなく自然な体育座りができるのである。 これは神姫の大きな特徴、引き出せる股関節によって成立する。 もちろん他にも、計算されたふくらはぎ、肘や爪先も幅広い可動範囲を誇る。 後述のスペーサーのためにももや腕を回せる構造など、可動の発想は普通のアクションフィギュアよりガンプラに近いとも言える。 また拡張性が他のフィギュアより大きく取られており、頭部や胸部や脚部を武装パーツと交換したり、二の腕や手首や太ももにスペーサーと呼ばれるジョイントパーツを取り付けて武装させたりすることができる。 一応お手本はあるが、組み合わせ方は自由。 他のアクションフィギュア同様に服などを着せてドールのような楽しみ方をする人も多い。 なお素体は現在までいろいろとバリエーションが広がっているが、説明がめんどくさいので割愛。 武装神姫は、 フルセット 素体と武装とスタンドがセットになった最もポピュラーなセット。 一つの弾で同じデザイナーによってデザインされた2種が類発売される。 約4000円だったが、最近は値上がりが激しい。 EXウエポンセット 頭部と武装と簡易スタンドのセット。 ボディは一部例外を除き付属しないので調達する必要がある。 約1700円 ライトアーマー フルセットに比べるとやや小ぶりなアーマーや武装が特徴な低価格タイプ。 フルセットと同じく2種類が同時発売される。 約3000円 MMS NAKED EXウエポンセット用や自作用に適したこな☆すたで単体発売されている素体。 白黒の他、肌色はいろいろあったり、胸のサイズが貧乳から巨乳まで用意されていたりと妙なところでこだわっている。 の方式で発売されている。 また箱に入っているアクセスコード(一部例外有り)をオンラインで使うことで自分の神姫を使って3Dスタジオ「武装神姫 DIORAMA STUDIO」と、育成シミュレーションバトル「武装神姫 BATTLE RONDO」で楽しむことができた。 なお、2ちゃんねるの神姫スレでは神姫の足をつまんで開いたり閉じたりすることによって炎のように燃え上がり荒んだ心が水を打ったように鎮まるという非常に高度な精神安定法が紹介されている。 人によっては神姫の頭やお腹を優しくなでるなどの方法も紹介されている。 主な武装神姫 (声はオンラインでのもの) ◆天使型アーンヴァル(阿澄佳奈) ◆悪魔型ストラーフ(茅原実里) デザイン:島田フミカネ(スカイガールズやストパン、メカ娘など) 通称:白子、黒子 起源にして頂点。 スパルタンなメカとツンデレ風な素体のストラーフに人気が集中。再販する度に即売り切れの伝説となる。 アーンヴァルは当初は出遅れ「在庫様」と呼ばれるも、後にオーソドックスなデザインが再評価されこちらも品薄に。 両者の状態は半年以上続き、彼女たちをお迎えすることは出遅れ紳士たちの目標となった。 後に限定品のリペイント、バージョンアップのアーンヴァル トランシェ、ストラーフbis、それらのリペイント、さらにMk.2も発表され、誰かこいつらをなんとかしろ。 ちなみにリペでは逆にストラーフの方が在庫様。 なおバージョンアップに伴い初期型は絶版扱いに。 関西圏域には「黒子狂」の名を持つ紳士が存在するなど、人気はかなり高い。 ◆犬型MMSハウリン(喜多村英梨) ◆猫型MMSマオチャオ(橋本まい) デザイン:BLADE(漫画家) 通称:犬子、猫子 第2弾。 大型のアーマーを着込むという独自のギミックになっているが、可動性と拡張性に劣り残念な出来に。 しかし素体自体には人気が集まり、面目躍如を果たす。20体以上のマオチャオをお迎えした紳士も確認されている。 また後に電撃ホビーマガジンで連載中のデザイナー自身による漫画「武装神姫2036」の設定に合わせ新規造形&新規武装のリペイントバージョン「凛」「まお」も限定発売されるが、あまりの人気に通販サイトの鯖が落ちたほど。 ◆騎士型MMSサイフォス(沢城みゆき) ◆侍型MMS紅緒(べにお)(門脇舞以) デザイン:篠房六郎(漫画家) 通称:騎士子、武士子、ベニモロ 第3弾。 コンセプトは悪くなかったものの、素体の顔があまりにもイラストと違い、パーツが落ちやすく、デザインでは金色の部分がうん…黄土色ということから人気が低く投げ売りされた。 特に人気のない紅緒の箱が立ち並ぶ様は赤壁と呼ばれた。 もっとも、投げ売り価格から改造して美人にしたり、ブスの方が飽きないとお迎えしたファンも少なくない。 ◆サンタ型MMSツガル(釘宮理恵) デザイン:GOLI(ビーマニなど) 通称:津軽 EXウエポンセット第2弾。 元はbeatmaniaIIDXの登場キャラクター…を元にして作り出されたらしい(濃いバックストーリーもある)。イラストカレンダー用にデザインされた武装をフィギュア化したもの。 公式に武装を合体させてゲットライド!させられることが明言されている。 後にリペイントのBlue X'masバージョンが限定発売された。 2018年にはコナミのアーケードゲーム「ボンバーガール」に参戦。 当初はビーマニからの参戦枠1人目と言われていたのだが、公式サイトなどでは「出典:ビーマニ」でありながら「武装神姫型ボンバーガール」と明言されている。 声は引き続きくぎゅ。武器もバトロンと同じくスナイパーライフルとハイパーエレクトロマグネティックランチャー。 ◆種型MMSジュビジー(名塚佳織) ◆花型MMSジルダリア(小林沙苗) デザイン:okama(漫画家、デザイナー) 通称:種子、花子、エウレカさん、麗花子 第4弾。 第3弾の悲劇から立ち直り、出来は第1弾の再来と呼べるほど安心できるものに。 しかしokamaの独特なデザインが他の神姫のパーツとの親和性が低いこと、PVC素材が多いためヘタレたりポロリしやすい難点も見受けられた。 なお現在ジルダリアは絶版扱い。 ◆セイレーン型MMSエウクランテ(加藤英美里) ◆マーメイド型MMSイーアネイラ(井上麻里奈) デザイン:間垣亮太(巨乳漫画家) 通称:鳥子、魚子、虜、イラ姉 第5弾。 この弾のヒットにより以降のメカ娘路線を決定づけたと言える。 今回から表情パーツが付属するようになった。 またイラ姉の胸パーツはデザイナーのこだわりにより今までのキャラを凌駕する巨乳となっており、ぶっちゃけ武装しないとバランス的に奇乳になってしまうほど。 後にブラックリペイントバージョンが限定発売されたが、こちらのイラ姉にはさらに新規巨乳パーツがつくと言うおっぱいバカっぷり。 ◆寅型MMSティグリース(植田佳奈) ◆丑型MMSウィトゥルース(桃井はるこ) デザイン:清水栄一+下口智裕(漫画家) 通称:寅子、丑子 第6弾。 今回は二体分の武装パーツを組み合わせることによるロボット形態「真鬼王」とバイク形態「ファスト・オーガ」に合体させることができる。 真鬼王がデザイナーのせいでどう見てもマキナなのは有名だが、組み換えでリガードになるのも有名。 合体を重視しているため、単体のプレイバリューは低いのが難点。2人一緒にお迎えすべし。 これの発売により紳士の間では複数買いして巨大メカを作るのが流行るが、パーツを組むことに熱中しすぎて神姫が疎かになってしまい「それ武装神姫つーかただの武装だろ」と本末転倒なものも多かった。 ◆ハイスピードトライク型MMSアーク(堀江由衣) ハイマニューバトライク型MMSイーダ(田村ゆかり) デザイン:CHOCO(ゼノサーガなど) 通称:A子、Y子、アー子、イー子 第7弾。 武装が3輪バイクに神姫込みで変形するという驚きのギミックが入っている(神姫無しでも変形可)。神姫も搭乗可。 しかしその分お値段はお高めで、クオリティの低いパーツの混入率も高かった。 後に白黒パトカラーも限定発売された。 現在は絶版扱いされている。 なおデザイナーのCHOCO氏は立体物にも非常に造詣が深く、同人誌の付録の形式を取ってフィギュアを販売。非公式ではあるものの、パーツは神姫との互換性を持たせているという力の入れっぷりを発揮している。 ◆アルトレーネ デザイン原案:一般投稿者 キャラクターデザイン:羽音たらく(おねティーなど) メカニカルデザイン:柳瀬敬之(ガンダム00など) 通称:アルトさん、ボク神 第11弾。 電撃ホビーマガジンで募集されたコンペの優秀賞を元に商品化されたもの。 ただしデザインは大幅にアレンジされている。 これに合わせて対となるアルトアイネスもデザインされ限定発売された。 また、グレンラガン、オトメディウス、スカイガールズ、ハヤテのごとく!等とMMSがコラボしたものもある。 メディアミックス及びその後の展開 PSPにて「武装神姫 BATTLE MASTERS」が発売。ジャンルはカスタマイズ対戦アクション より鋭角的になった白子と黒子のMk.2が新登場している。 その後、完全版の「Mk.2」も発売した そして、TBSにてアニメ化、決定。 しかし2011年にバトルロンドがサービス中止、その後開始されたソシャゲも半年でサービス中止。 2012年には更にコナミの玩具部門が閉鎖され、公式からの新作の発売は事実上中止状態であり、旧作の再販も行われなくなった。 アニメも放送されたにもかかわらず、この状態は一切改善されず、アニメで興味を持ったファンは中古品を探すしかなくやきもきする羽目に。 しかし固定式ではあるものの新作フィギュアが他社から発表するなど細々と生き残っている状態ではあったが、やはり固定式ゆえか難民を満足させるものとはならなかった。 そんな2014年、ワンフェス会場にて鳥山Pと浅井氏による「武装解除宣言」が行われる。 後のコメントではこの時何をやるかは何も考えてなかったとぶっちゃけられていたのだが、翌2015年にコトブキヤよりプラモデル化が公開。現在アーンヴァルとストラーフが企画中で、企画は浅井氏の新素体「マシーニカ」を採用している。 3.2mmの神姫穴は健在らしいので、神姫からのパーツの流用は可能と思われる。 似たようなカテゴリーのキットとしてFA G及びメガミデバイスが好評を博しているのもあり、武装紳士たちから新たな受け皿となれるか熱い視線を向けられている。 そして2017年冬コミケ(C93)KADOKAWAブースにおいて、唐突にアーンヴァルとストラーフの新規グッズが販売されることが発表される。 (武装神姫の情報発信を行っていた電撃ホビーマガジンは現在KADOKAWA傘下のため) だが飢えた武装紳士達がグッズを求めて有明で目にしたものは……。 Re Arm(再武装) Re Boot(再起動) Re Construct(再構築) 2018年。 KONAMI、KADOKAWA、KOTOBUKIYAによる武装神姫再始動の一報であった。 2020年12月。 「武装神姫 アーマードプリンセス バトルコンダクター」稼働開始。 神姫カードという新たな形で神姫たちは復活した。 追記・修正お願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 今でも時々バトロンがしたくなる -- ジル子の旦那 (2013-11-16 19 28 01) コナミでの販売、修理受付終了…バイク型2体は幻のままに -- ヴァローナのマスター (2014-03-06 17 42 19) あーんばるが良いと思うの! -- 天使型mk2のますたーさん (2014-03-06 21 17 15) 時々バイク型をお迎えする夢を見るんだ… -- 名無しさん (2014-03-06 21 21 53) 復活!! -- 名無しさん (2015-07-26 19 49 05) バトロン、エミュ鯖でいいから復活しないものだろうか…… -- 名無しさん (2015-07-26 19 55 17) FAG出た辺りでブキヤが武装神姫拾ってくれないかなぁ、とは思ってたが、まさかマジでブキヤが拾うとは……。「武装解除して待て」ってのは今回の事だったのか -- 名無しさん (2015-07-26 20 51 02) 復活って聞いてコナミやるじゃんって手のひら返そうと思ったけどコトブキヤがリメイクしてくれるのか。私はそのまま手のひらをセットしてターンエンド。 -- 名無しさん (2015-07-27 03 09 51) ↑その手のひらにサイクロン撃ちますね(^^ -- 名無しさん (2015-07-27 07 06 11) 漫画やゲームもでてた気がするな 漫画やゲームの評価ってどうなの? -- 名無しさん (2015-07-27 12 30 43) お前らはえーよw …今度こそバイク型の二人出るよな…?期待してもいいんだよな?ブキヤ、頼むよ? -- ヴァローナのマスター (2015-07-27 16 04 53) アニメはめっちゃすきだったなぁ OPもEDも最高だった -- 名無しさん (2015-10-12 23 09 40) お値段も手頃になると有難い…何せ神姫さん達元値が高い上にプレ値上等だから手が出せない…。 -- 名無しさん (2015-10-12 23 13 18) 最初の印象は美少女版カスタムロボだったな -- 名無しさん (2015-10-12 23 25 10) 高校二年の時、メカ少女特集をしていたメガミマガジンクリエイターズを買ったのが全ての始まりだった。島田フミカネのページで発売前の第一弾の二体が飾られていたのが切っ掛けだった。数か月後に今は亡きハローマックでストラーフを購入して感動し、乏しい財力でひたすら集めた。そして遂に再び形は変われど彼女たちと触れ合えると思うと -- 名無しさん (2015-10-12 23 35 13) ↑6 漫画:ZERO・2036・モバイルの三作品があったっけ?どれも面白かったよ。ZEROは単行本で大幅に加筆されてるので気になったら一読して見るのもあり。 ゲーム:バトマスはMK2の完全版商法っぷりがなぁ…DLC周りも2作続けて不備が多かった印象。 アニメ:非常にクォリティの高い良作。新たにカンチラというジャンルを世に生み出した。 -- 名無しさん (2015-12-03 18 10 25) 他人だが↑に追記。PC版のバトルロンドはスッゲー面白かったぞ。知識が必要なので初心者の内はきつかったが。開発チームの対応も良かった。だが中期になってチームメンバーが交代するとgdgdが進行し、声のでかい古参が初心者お断りの現状に気付かず舞い上がりすぎたせいで失速してしまったな -- 名無しさん (2015-12-03 19 46 20) アニメのこれでもかってほどかわいいで味付けしたトイストーリーって雰囲気が最高なんすよ -- 名無しさん (2016-07-22 07 22 05) バトロン、再開しないかなぁ…… -- 名無しさん (2016-07-22 07 25 00) バトルロンドは当時高房だった俺には衝撃だった。どうしても課金装備が強すぎるのと、戦略の分かりづらささえどうにかできれば何とか…。PSNあたりで追加課金制のプレミアムコース有、とかならサーバー代も確保しやすいんじゃぁ…でもフィギュア自体が高騰しているから無理か -- 名無しさん (2016-07-22 09 11 33) ブキヤ版販売も、BD-BOXの素体販売も、そろそろ続報来てくれ -- 名無しさん (2016-07-22 10 17 01) お願いです、バトロン復活を>< -- 名無しさん (2016-10-21 14 20 17) ちなみに、武装神姫の二次創作書いたことがあったけど、やっぱり白子がヒロインだったw ちなみに準ヒロインは犬子だから安心すべしww -- 名無しさん (2016-10-21 14 25 32) Re arm Re boot Re construct(再武装 再起動 再構築)のキャッチコピーとしずまよしのり氏など新絵師を一挙に迎えシリーズの本格的な再スタートが始まる模様 だいたいコトブキヤのせい(平伏 -- 名無しさん (2018-01-04 09 30 18) ↑これを機に、オンゲも復活させてほしい!>< -- 名無しさん (2018-01-10 19 04 58) コトブキヤが自前の企画で忙しいことを考えるとまずはコナミからソシャゲ出して角川で漫画の連載とかかな?出てきてる新デザインの子らも立体化考えてるか怪しい感じだし。 -- 名無しさん (2018-01-10 19 43 07) ↑コトブキヤ商品開発部のマンパワーだとFAガール一体につき年単位の期間を掛けて仕様検討している。…つまり仮に新神姫を商品化する場合「もう始めてる」と見ていい -- 名無しさん (2018-01-24 09 49 41) 一部では歴史で例えると大阪の陣が起こって天下取りが決まろうとしてるタイミングで織田信長が地獄から兵を連れて戻ってきたような衝撃と表された -- 名無しさん (2018-01-24 14 35 24) ブキヤアーンヴァル・ストラーフについては今回のワンフェスでは全く触れられなかったんだが、メガミデバイストークショーでなんとなく状況がわかったかな。簡単に言うと新シリーズは「コナミカドカワコトブキヤがメガミデバイスブランドで展開する」「アーンヴァルストラーフはコトブキヤのフレームアームズガール側のスタッフによるプラモ化」だから、2つの企画には関連性が全くないんだ。 -- 名無しさん (2018-02-19 09 56 52) もし、オンゲにするとしたら、マギレコやFGOのようなタイプかなぁ。カード数は、神姫の衣装違いで増やすって手があるし。 -- 名無しさん (2018-02-19 10 39 16) という訳(?)でメガミデバイス互換でRe第一弾エーデルワイスが発表、もしかするとあんばる達より先に出るかも… -- 名無しさん (2018-02-19 13 25 38) しずまはいてイチソはいない… -- 名無しさん (2018-02-19 14 19 03) ↑何!?はいてないのはフミカネ氏やしずま氏の常套では無いのか!?(錯乱 -- 名無しさん (2018-02-20 03 13 29) 遊戯王の新テーマ「閃刀姫」がどう見ても武装神姫な件。再起動に引っ掛けたか? -- 名無しさん (2018-02-27 19 39 36) ↑3 イチソはメカ造形苦手そうだし、まあ仕方ない。艦これ絵師で他に望みありそうなのはくーろくろかなあ -- 名無しさん (2018-03-14 05 28 49) 待ちに待った時が来たのだ。『武装神姫 アーマードプリンセス バトルコンダクター』『武装神姫R』発表! -- 名無しさん (2020-02-07 16 58 30) 展示したまま何年も動いてなかったアーンヴァルの正体が配信で明かされたね。そもそもブルーレイの時の再生産をコトブキヤが担当してその流用でアーンヴァルを出すつもりだったと…… -- 名無しさん (2021-08-29 15 42 20) 祝!メガミ版ストラーフ予約開始! -- 名無しさん (2022-12-13 08 35 57) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/445.html
前へ 先頭ページへ 人、人間、ヒューマン。 今現在、地球の食物連鎖の頂点に君臨する種族たるそれは、地球に存在するあらゆる獣に劣る。 犬に噛まれて、最悪死ぬ。 道に落ちているものを食べて、最悪死ぬ。 熱かったり寒かったりで、最悪死ぬ。 身体能力、免疫能力、適応能力etcで動物以下の能力しかもたないそれらが、唯一獣に勝る物、それは頭脳。 人は思考する。 人間は想像する。 ヒューマンは予想する。 犬に噛まれない為に、その習性を理解して手なずける。 道に落ちているものが安全かどうか、知識を持つ。 熱かったら身体を冷却し、寒ければ防寒具を身につける。 本能の命じるままに動く野性を抑え。 頭を働かせる理性を伸ばす。 それが人の人たる由縁であり、最大の武器でもある。 しかし、それはあまりに複雑だ。 人は理性と共に高度な自我を持った。 それは一つとして同じ物は無く、それを完璧に予測するのは困難を極める。 どんなに技術が進歩しても、それを意のままに操る事は出来ない。 それを心の底から痛感している人間―――恵太郎が、ここにいる。 狭いアパートの4分の1を占めるベッドの上に力なく寝そべりながら、その日何度目か解らない疑問を口にする 「何でこうなるんだろうなぁ」 悩む事は無駄ではない。 試行錯誤の果てに正解を見つける、この試行錯誤こそが重要ではないだろうか。 その過程で人の自我は成長していくのではないだろうか。 もっとも、正解を既に見つけているにも関わらず苦悩するということを現実逃避とも言うのだが。 恵太郎の心を掴んで離さない人物、それは他ならぬアリカだ。 だからといって、それは恋のような甘酸っぱいものではなく、どちらかといえば苦いものだ。 アリカは先日のリアルバトルからというもの、恵太郎を師匠と仰ぎ付き纏うようになったのだ。 その原因の8割程は恵太郎自身にあると言えるだろう。 だが、これだけでは恵太郎が苦悩する理由にはならない。 恵太郎が苦悩する理由、それはアリカがかつての自分と被って見えてしまうからだ。 アリカが本当に鬱陶しいのなら、冷たく突き放すという選択肢もある。 しかし、恵太郎にはそれは出来ない。 何故なら、アリカと恵太郎は全く同じ境遇にいるからだ。 もしもアリカを冷たく突き放す、という事を恵太郎がやられた場合。 恵太郎は立ち直れない自信があった。 だから、恵太郎の執る選択肢はアリカを極力避けるという無気力なものだった。 しかし、運命の悪戯というものは、かくも皮肉なものなのだろうか。 恵太郎や佐伯姉弟が通う大学、その門を潜り抜けながら恵太郎は深く溜息をついた。 「何でこうなるんだろうなぁ」 そして、その日何度目か解らない疑問を口にした。 もっとも今までと違う点を挙げるとすれば、その疑問の中心人物がすぐ脇にいる事だが。 「弟子たるもの、何時如何なる時でも師匠に付き添うのがキホンってものです!」 恵太郎の脇でご機嫌な様子で元気に喋るのはアリカだ。 その肩の上ではアリカの武装神姫たるトロンベが困惑半分、興味半分といった様子で静かに座っている。 恵太郎はそれを尻目に、その身に降りかかった不幸を嘆いている。 一体何処の誰がアパートの前でアリカを鉢合わせる事になると想像できようか。 「それにしても、大きな大学ですねー」 そんな事とは露知らず、アリカは周囲を見回しながら感嘆している。 確かに、その大学は大規模な工場を備えているのでその分大きい。 だが、そこまで驚く物ではないのではないかと、恵太郎は内心呟いた。 「あんまりキョロキョロするなよ」 恵太郎は周囲を探るように言った。 どちらかといえば、周囲の視線を測るようにだ。 その理由は単純明快。 アリカが人の目を集めているからだ。 ここは大学であって、遊園地ではない。 アリカのような少女がいる場所ではないのだ。 人数まばらな日曜とはいえ、アリカはそれなりに奇異の視線を集めている。 それが恵太郎の頭痛の種となっているのだ。 恵太郎は、それを振り払おうとするように歩く速度を上げた。 「っと、師匠待ってくださいよ~」 それはアリカにしては速すぎたようで、早足で恵太郎を追いかけた。 空は雲ひとつ無い快晴である。 だが、恵太郎はそれに気付くほどの余裕をまだ持ち合わせていなかった。 重厚な扉の上に掲げられたプレートには『多目的研究室』と書かれていた。 その下には張り紙で『第13班』とも書かれていた。 「師匠、今日は大学で何をするんですか? 今日日曜ですよね?」 「それは全員そろってから説明する」 アリカは小首を傾げつつ、恵太郎に問いかけたが一瞥されただけで満足の行く回答は帰って来なかった。 それに不満を感じたのかアリカは少し膨れているが、恵太郎はそれに触れる事無く扉を開け中に入っていった。 恵太郎の後に続き、部屋に入るアリカ。 その部屋は白い壁に3方を囲まれ、1方はガラス張りの壁だった。 壁際には様々な器材が所狭しと置かれており、部屋の中央にあるテーブルの上では資料と思しきものが山を作っている。 「アリカ、お前を紹介するからちょっと来い」 アリカはそれらを物珍しそうに見てたが、恵太郎の声にそれを中断した。 「コイツがあのアリカです……ほれ、挨拶」 「あ、あの、はじめまして。アタシは水野アリカって言います」 アリカは恵太郎に促されて挨拶したが、緊張しているのか、その身体は強張っていた。 「初めまして、トロンベと申します」 それと対照的にトロンベは落ち着いて挨拶した。 だが、良く見ると身体が小刻みに震えている。 「この人が佐伯 裕也先輩」 恵太郎は裕也を指して短く紹介した。 「おう、よろしくな、譲ちゃん達!」 それに気を悪くする事無く、豪快に挨拶をする裕也。 「にゃーは蒼蓮華なのだー、よろしくなのだー!」 その肩の上で元気一杯に挨拶する蒼蓮華。 「この人が佐伯 裕子先輩。裕也先輩の双子の姉に当たる」 「よろしくね、アリカちゃん、トロンベちゃん」 春の日差しを思わせるのほほんとした口調で裕子は挨拶を交わした。 「初めまして、私はアル・ヴェル。今後ともよろしく」 ポニーテールにしたアーンヴァル型のアル・ヴェルが挨拶をする。 「そういや、茜は来てるんですか?」 一通り紹介が住んだのを見計らって恵太郎は口を開いた。 「ああ、奥の部屋で武装のメンテをしてるぞ」 裕也は指でガラス張りの壁を指差しながら応えた。 「それと、孝也も来てるぞ」 最後に一言付け加えたが、その言葉に恵太郎は顔を顰めた。 「アイツも来てるんですか…」 「我が主をアイツ呼ばわりとは、恵太郎殿はまことに我が主に厳しいで御座るな」 何時の間にやら恵太郎の肩の上で腕を組んでいた忍者型の神姫が口を開く。 「確かに多少問題はあれど、あれはあれなりに良いところがありまするぞ」 「ああ、解ったから降りてくれ、トリス」 トリスと呼ばれた神姫は、恵太郎の言葉を聞き入れ、テーブルの上へと移動した。 「アリカ殿、トロンベ殿。お初にお目にかかる。拙者、忍者型神姫のトリスと申す。以後お見知りおきを」 そして、アリカとトロンベに向かい丁寧に挨拶した。 アリカはそれに軽く返礼すると恵太郎へ向かい問い掛けた。 「師匠、茜って?」 「ちょっとした事で知り合った女の子なんだけど、凄い技術を持っていたからスカウトしたの。それと、コーヒーしか無いけど良いかしら?」 アリカの質問に裕子が代わりに応えた。 それと同時にインスタントのコーヒーを差し出した。 「あ、ありがとうございます」 アリカはコーヒーを受け取り、ガラス張りの壁に視線を送る。 その奥の部屋はこの部屋と違い黒い壁、というよりコンクリートむき出しの部屋で、機械的な装置が多数設置されており、床には大小無数のコードが這っており、天井にはダクトやケーブルが縦横無尽に奔っている。 そこでは白衣を着た二人の人間がなにやら作業をしているのが見受けられた。 それと同時に、アリカは言いようの無い不思議な感覚に襲われた。 「……まさか、ね」 アリカはそれを振り払うように首を振った。 「ご主人様、どうかしましたか?」 主の変化を機敏に察知したトロンベがアリカに声をかけた。 「ううん、何でもないの。ありがとう、心配してくれて」 それに人差し指で頭を撫でながら事によって応えるアリカ。 トロンベは心地良さそうに目を閉じるだけだ。 「茜ちゃん、孝也君、皆揃ったわ」 テーブルの上に置かれたマイクに喋りかけるアリカ。 それはスピーカーを通じて奥の部屋へと呼びかけられた。 「解りました~、今行きます」 確かに少女の、ただ若干機械的な響きを伴った声が恵太郎達の部屋に響いた。 少し遅れてガラスの壁が天井へと向かいスライドした。 それが完全に天井の中へと収納されるのを確認した人物が恵太郎達の元に走りよりつつ口を開いた。 「けーくん、会えて嬉し…アダッ!」 恵太郎は走り寄ってきた人物に容赦のない蹴りを叩き込んだ。 「寄るな、鬱陶しい」 腹部を蹴られたその人物は地面をのた打ち回っている。 「…師匠、誰ですかコイツ」 アリカはそれをやや離れた位置から見下している。 「ああ、君がけーくんの弟子のアリカちゃんだね! ボクは高野 孝也、けーくんの親友だよ」 「誰が親友だ、誰が」 いつのまにか立ち直った孝也は、恵太郎から冷たい視線を浴びせられた。 「なーんかオタク臭いわね…」 「あはは、手厳しいね」 アリカは孝也の白衣に眼鏡という出で立ちを見て、正直な感想を漏らした。 しかし、それに対して孝也は困ったように笑うだけだ。 その様子を傍観していた恵太郎だが、ふと思い出したように口を開いた。 「…アリカの事、お前に話してたか?」 言いながら佐伯姉弟の方も一瞥した。 「それなら、私が話しときました」 今まで黙っていた、もう一人の白衣の少女が口を開いた。 眼鏡に白衣と、孝也と同じ服装だが、こちらは様になっていてどっからどう見ても研究者だ。 「アリカの事なら私が一番知っていると思いましたから」 にこやかに言い放つ少女。 それをワナワナとしながら見ていたアリカは口を開いた 「何でアンタがココにいるのよ!?」 その叫び声は、四つ隣の研究室まで聞こえたという。 世界は広いようで狭い。 芸能人が近場に住んでいたり、学校の友人が実は親戚だったり。 幼馴染と10年ぶりに再会したり、街中で親とすれ違ったり。 人と人との縁というのは、本当に摩訶不思議な物だと思う。 それでも、こんな縁は御免だ。 アタシの目の前では茜が師匠達と和やかに談笑している。 それは永年連れ添った中間達、といった様子でアタシのような新参者が入り込むことすらおこがましく感じる。 「マスター、そろそろ今回の目的を話されては?」 今まで他の神姫とテーブルの上で談笑していた師匠の神姫、ナルちゃんが口を開いた。 「ああ、そうだったな。……実は先輩達に頼みたい事がありましてね」 師匠は周囲をぐるりと見回しながら言った。 その中に、アタシが少しでも入っていれば良いのに。 「なんだ、恵太郎が頼みとは珍しいな」 「ボクに出来る事だったら何でもやるよ、けーくん」 裕也先輩と高野が快く快諾している。 声には出していないけれども、裕子先輩や茜の表情からは悪い感情は感じられない。 「単刀直入に言うと、ナルの装備が壊れました。よって、その修復を手伝って貰いたい訳です」 「ああ、アリカが壊したアレですね」 茜がアタシの方を見ながら言った。 今気付いたが、ここでの茜はちゃんと人の目を見て話している。 それに学校で話すときと随分感じが違う。 この感じは、茜の家に遊びに言った時と同じだと思う。 つまり、ここにいる人たちにそれほど心を許していると言う事なのだろうか。 「私達で良ければ幾らでも力になるわ」 「ありがとうございます、先輩」 どうやら話が纏まったようだ。 師匠が懐からだしたメモリーカードを差し出して、色々と話し込んでいるのが聞こえる。 その中にはアタシが聞いた事の無い単語が飛び交うので、師匠たちが大学生なのだと実感する。 そして、それに茜が混ざっているのに違和感は感じられない。 アタシはそれに加わる事無く、ただ傍観に徹するのみ。 残り少なくなったコーヒーを口に含みつつ、視線を泳がす。 「そうだけーくん、アリカちゃんに大学紹介してあげたら?」 その言葉に身体が反応する。 「そうですよ先輩、ここは私達に任せてどうぞごゆっくり」 「いやマスターの俺がいないと色々問題が…」 「気にすんな恵太郎! ちゃんと改造しといてやるから!」 「何ですか改造って。俺はただナルの装備を修復しにきただけですから…」 「恵太郎君、年上の言う事は聞くものよ?」 師匠は思いっきり抵抗していたが、裕子先輩に言われると黙ってしまった。 ……これはチャンス? 「解りました。後は任せますけど、おかしな事はしないで下さいね?」 師匠は念を押すように、低い声で言う。 それと同時にアタシの方を見てから、指で扉を指した。 外に行くという合図だろう。 アタシはコーヒーをテーブルの上に置いて師匠に歩み寄った。 「そうだ、アリカ。トロンベちゃんもメンテしとくわ」 途中で茜に呼び止められたので、渋々トロンベを手渡した。 その間際、トロンベがどうする~アイ○ル~的な視線を送ってきたので、頭を優しく撫でてあげた。 「大丈夫、直ぐに戻ってくるから、ね?」 「…はい! ご主人様」 元気に応えるトロンベを確認して、師匠の元へと向かう。 師匠は既に廊下に出ており、扉の隙間から雲ひとつ無い快晴が見えた。 「さて、これで邪魔者はいなくなりましたね」 恵太郎とアリカが出て行ったのを見計らい、茜が口を開いた。 かけた眼鏡のレンズが反射して、その眼を窺い知る事は出来ない。 「じゃあ、とっとと作業始めようか!」 裕也がやたら元気に音頭を取る。 「…ただ直すだけというのも芸が無いでござる」 その時、孝也の頭上から声がした。 トリスは腕を組み、足を揃えて静かに続ける。 「ナル殿の刃鋼と銃鋼は確かに高性能でござる。しかし、あの御寮人にはもう物足り無いのでは御座らんか?」 「そうえば恵太郎君、ナルちゃんの装備をあれにしてからもう一年経つのね」 「そうだな、そろそろ強化の頃合かもな、姉貴」 トリスの言葉に佐伯姉弟も同意しているようだ。 それを確認し、満足そうに頷くトリス。 「そうであろう、そうであろう。今のナル殿に必要なのは機動力と火力の両立、そして隙の無い間合いだと拙者は思う」 「けど、けーくんのいない間に勝手に弄っちゃまずいんじゃ…」 乗り気ではない孝也に対し、茜はノリノリだ。 「…そういえば新型の荷電粒子砲を開発したって、四班の人たちが言ってましたねぇ。それに六班は燃料電池の小型化に成功したとも聞きましたよ。」 顎にひとさし指を添え、上方を見ながら喋る茜。 その言葉に反応したのは佐伯姉弟だった。 「なるほど、じゃあ俺は四班の連中と交渉してくるか」 「じゃあ私は七班の人たちに頼んでくるわね」 そういい残すと、颯爽と部屋から出て行った。 後に残されたのは茜と孝也だけだ。 孝也は未だに乗り気でないらしく、困った顔をしている。 「主殿、首尾良く強化できれば恵太郎殿もお喜びになられますぞ」 その肩に飛び降りたトリスは軽く耳打ちをした。 「でも、ナルちゃんの意思は…」 「私はむしろウエルカムです」 だいぶ心が揺れてきたのか、孝也の視線が泳いできた。 そして、最後の希望として話しかけたナルにも快い快諾を貰ってしまった。 「それでは制御用プログラムを作りましょうか。先輩、私だけではキツイので援護お願いします」 もはや言い逃れる術は無かった。 「ただいま戻りました」 広大な敷地面積を誇る大学をアリカに案内していた恵太郎が研究室へと帰ってきた。 その顔には明らかな狼狽の色が現れている。 「ただいま戻りました~!」 そんな恵太郎とは対照的に、元気一杯に研究室へと飛び込んだアリカ。 その顔には満面の笑みが浮かんでいる。 「よう、遅かったな恵太郎」 奥の部屋から裕也の言葉だけが響く。 「ここの敷地面積知っているでしょう…」 それに力なく椅子に腰掛けながら応える恵太郎。 その言葉からは肉体的な疲労と言うより、精神的な疲労の方が多く見える。 「どうだった、アリカちゃん?」 「はい、凄い楽しかったですっ!」 裕子の問いに満面の笑みで応えるアリカ。 その表情からは翳りは一切無く、その言葉が本意であることを物語っている。 「で、けーくん。何処を案内したんだい?」 孝也は壁際に備えられたパソコンに向かいながら問い掛けた。 「ひとまず一班から十二班まで順番に。その後MMS博物館を回って資料室と工場見学。最後にバーチャルマシーンセンタの順に。」 「成る程、それは疲れるね」 机に突っ伏しながら応えた恵太郎に軽い労いの言葉を掛ける孝也。 「神姫好きにはたまらないコースですね、先輩。どうぞ」 「ん、ありがとう」 恵太郎にインスタントコーヒーを手渡す茜。 「はい、アリカも。あとトロンベちゃんのメンテだけど、当然ながら問題は無かったわ」 「悪いわね」 アリカはコーヒーとトロンベを受け取ると、恵太郎の隣に座った。 「ご主人様、外はどうでしたか?」 「そりゃ凄かったわよ~。初期に作られたというMMSのアーキタイプとかあって……」 アリカはトロンベに今見てきたことを話して聞かせている。 茜はそれを一瞥すると奥の部屋へと歩いていった。 暫しの間、研究室にコーヒーの香りとキーボードを叩く音、そしてアリカとトロンベの談笑が支配した。 「ところで、ナルの修復は?」 一息ついたところで、恵太郎は誰にでもなく話しかけた。 「後は孝也君が制御プログラムの最終調整をしている所よ」 「……制御プログラム? 何か問題でもあったのですか?」 恵太郎の問いに裕子が応える。 その問いが若干予想外であった為、恵太郎は二度目の疑問を口にした。 「まあ、出来上がってからのお楽しみね」 しかし、その問いに満足の行く回答が反される事は無かった。 恵太郎はそれ以上追及する事無く、孝也へと視線を移した。 孝也は忙しなくキーボードを叩きディスプレイを睨んでいる。 裕也と茜は奥の部屋で作業をしている。 裕子は資料の整理をしている。 恵太郎とアリカは並んでコーヒーを飲んでいる。 名状しがたい、しかし、悪くは無い空気が研究室に満ちていた。 「ところで、四班と七班の連中から嫌な視線を感じたんですが、知りませんか?」 「それも出来上がってからのお楽しみね」 恵太郎はそれ以上追従出来なかった。 「ふう」 その空気の中、孝也が静かに溜息をついた。 研究室にいる全員の意識が孝也に集中する。 「制御プログラム、何とか出来たよ。かなり突貫だから荒が有るのは許してもらいたいけどね」 そして、パソコンからメモリーカードを抜き取ってそれを茜に手渡した。 「ご苦労様です、先輩。では、こちらへどうぞ」 茜に促されるままに恵太郎達は奥の部屋へと向かう。 地面を這うケーブル類をうっかり踏まないように、全員が注意して歩く。 目指すは部屋の隅に陣取る天井まで届く円柱状の装置。 その脇に置かれたコンソールを叩き、スロットにメモリーカードを挿入する。 「それでは恵太郎殿、生まれ変わったナル殿をご覧あれ」 コンソールの上に、何処からとも無く表れたトリスが恵太郎に恭しく頭を垂れる。 それとほぼ同時に、円柱状の装置の真ん中から上下にスライドした。 その中からは大量のスモークが溢れ出し、油圧式アクチュエーターによりナルが固定された台座ごと押し出された。 徐々に薄くなっていくスモークと共に、ナルの全貌が明らかになる。 それを見て、恵太郎は絶句した。 「何…この……何?」 それも無理は無い。 何故なら、今のナルの姿は以前とは比べ物にならない姿になっていたのだ。 まず頭部には目を惹く大きな、紅い角が生えた。 そして脚部はストラーフ型の基本パーツを装着。 が、その右腕はその身の丈と同等のサイズの砲身と化している。 次に左腕自体も大型化し、持つ刃鋼は規則正しい割れ目が入った不思議なモノになっている。 最後に最も異形の部分、背中である。 腰部には元からあった補助ブースターを改造したと思しき巨大なブースターが。 そして、背中部分には腕、と言うより触手が生えている。 「ただ装備を修復するだけではつまらないと思ったので、色々と強化してみました」 茜はその様子を楽しむように解説を始めた。 「まず、右腕の銃鋼は四班が新たに開発した荷電粒子砲を搭載しました。従来のトライリニアアクセラレータ型ではなく、シンクロトン型へと変更しました。これによって装置自体は巨大化しましたが、その分耐久性能は抜群に上昇、更に、同型の荷電粒子砲を一対に組み合わせ、交互に発射する事で威力は従来のままに連射性能を底上げしたので以前のようなチャージの必要はありません。次に左腕の刃鋼ですが、これは裕也先輩のアイデアを基に設計しました。俗に言う蛇腹剣というものなのですが、最大射程は10smと中距離戦闘では抜群の戦力を誇ります。 また、ある程度の操作が可能なので熟練すればまさに手足のように扱えるかと思います。今回強化した銃鋼と刃鋼ですが、その威力と引き換えに機動性を大きく削ぐ結果となってしまいました。簡単に言えば、重すぎたんです。それを補う為に背部ブースターの巨大化と全身各部に補助スラスターの設置で、一応は機動性を確保しました。ですが、重量が極端に増加してしまい、立つことすら侭なら無い状態になってしまった訳です。その為に、身体を支える為に三つ目の腕。鉤鋼を追加したところ、身体のバランスを取ることが可能になったばかりか、かなりトリッキーな動作も可能になりました。また、鉤鋼自体を使った攻撃も可能でそれなりに使い易いかと。最後に一つ留意点なのですが、銃鋼・刃鋼・鉤鋼のそれぞれの武装を使用中は、他の武装を併用できない事を覚えておいて下さい。具体的には、銃鋼を使用する為には左腕を使った照準補助と鉤鋼を使った姿勢補助が必要なんです。銃鋼は連射性能を飛躍的に強化したんですが、その反動自体は以前より悪化しているんです。次に、刃鋼の場合ですが、これも鉤鋼の姿勢補助が必要です。銃鋼は反動等の理由で併用はほぼ不可能です。最後に鉤鋼ですが、これは鉤鋼を使用している間は姿勢制御が出来ないのが理由です。それと、頭部ホーンは高性能センサー群です。以前と同じドップラーセンサーと超音波センサーを搭載しています……何か質問はありますか?」 心なしか嬉々としている様に見える茜とは違い、恵太郎は呆然としている。 「マスター、似合いますか?」 当のナルはというと、頬を若干紅く染めて恵太郎に問い掛けている。 その表情だけ見れば可愛らしいものだが、その全貌と合わせてみると悪魔の囁きにしか見えない。 「……ああ、最高に似合っているよ」 ようやく我に返った恵太郎が、ナルを褒める。 その表情に嘘偽りの影は無く、其方かといえば清々しい表情だ。 「茜、バッテリーはどうなってる? 前のままだとガス欠で動けないだろう」 「はい、第七班の新型燃料電池のお陰でバトルには一切支障はありません。銃鋼自体も外部イオン供給型なので、打ち放題です」 「パーフェクトだ、茜……孝也、鉤鋼の制御プログラムの内訳は?」 「通常歩行、走行、跳躍、武装使用時の四種類だけだよ」 「ナルは元々腕が四つある、多少の負荷は許容範囲だ。そこら辺を考慮して、自由度を上げて置いてくれ」 「分かったよ、けーくん」 「裕也先輩、刃鋼の耐久性は?」 「刀身部分は秒速5km/sの弾丸にも耐えられた。連結部分は集束モノフィラメントワイヤーで防護してはいるが、秒速2km/sレベルが限界だ」 「ありがとうございます、充分ですよ」 そのやり取りは研究者というより、悪の秘密結社という方が似合っていた。 「全く、先輩達には何時も驚かせられますよ。こりゃ馬鹿と冗談が総動員だ」 もう吹っ切れたのか、全員を見回しながら言った。 「師匠、凄いじゃないですか! これで向かうところ敵無しですねっ!」 アリカはまるで自分の事のようにはしゃいでいる。 「そうでもないさ」 「へ?」 アリカと対照的な恵太郎は、視線をアリカから裕子へ移した。 「裕子先輩、ナルの作動テストとして手合わせ願います」 その言葉にはある種緊迫したものが混じっていた。 「ええ、良いわよ」 裕子の表情は何時ものように小春日和の陽射しのようだ。 「…アリカ、良く見て置けよ」 「も、勿論ですよっ!」 恵太郎は険しい表情でアリカに言った。 バトルフィールド『宇宙船』 剥き出しの金属フレームに金網の足場。 余計な装飾は一切無く、あるのは金属の冷たい感覚。 戦う為に生み出された武装神姫の戦場に相応しい……ナルは新たな武装を纏いそんな事を考えていた。 今回の相手はアル・ヴェル。 もう両者共にフィールドへの転送は終わっている。 普通のバトルなら、こんな悠長に構えている暇は無い。 だが、これはナルの新武装の作動テストだ。 あくまで、名目上はだが。 恐らく恵太郎は本気だ。 ナルはそう考えていた。 「お待たせしました、ナル」 頭上から声が掛けられた。 「いえ、お気になさらず」 その声の元へ視線を送る。 そこには空中を踏み締めてナルを見下ろす雪の様な白い髪の神姫―――アル・ヴェルが居た。 アーンヴァル型の彼女だが、その装備はアーンヴァルとは異なるシルエットを醸し出している。 胸部アーマーはナルのモノと酷似している。 腰部のブーストアーマーもナルのモノと酷似している。 唯一違うのは、脚部。 脚には足首部分から三対の巨大な鋼の羽が生えている。 武装名は『羽鋼』 「裕子先輩の神姫、ナルちゃんに似てる…?」 茜はディスプレイに映る両者を見て、思わず声を漏らした。 赤と黒のボディ、白いボディ。 機体色の違いこそ有れど、それほどまでに両者は似通っていた。 「そりゃそうさ。恵太郎はアル・ヴェルの武装を模倣してナルの装備を作ったんだからな」 裕也はさも当然と言わんばかりだ。 「そんな事より」 そこに茜が割り込んだ。 「アリカは運が良いわ。だって裕子先輩のバトルしている所が見れるのだから」 「どう言う事?」 アリカは茜の真意を測りかねている。 「裕子先輩はこの大学最強の神姫マスターなんだよ」 それに端的に答える孝也。 しかし、その目線はディスプレイに釘付けだ。 気付けば蒼蓮華やロン、トリスですらディスプレイを凝視していた。 『ナル、初めは銃鋼だ』 恵太郎の声がバーチャル空間に響く。 『アル・ヴェルは攻撃に当たらないように避けてね』 それに続き、裕子の声が響く。 ナルとアル・ヴェルは無言で頷きある程度距離を取る。 「…師匠と手合わせするのは久しぶりですね」 ナルは全身の駆動チェックを行いながら呟いた。 その呟きには哀愁に満ちていた。 「マスターはバトルを好みませんからね」 アル・ヴェルの声は、ナル程では無い物の哀愁に似た響きが混じっていた。 「今日は、師匠を満足させられると良いのですが」 ナルは刃鋼で銃鋼を支えながら持ち上げた。 背部では鉤鋼に備え付けられた巨大な鉤爪が足元の金網を抉っている。 「ふふ、そんな気張らなくても良いわ」 アル・ヴェルは羽鋼を展開させた。 その翼長は悠に3smはある。 『よし…ナル、用意が出来たら好きなタイミングで発射してくれ』 ナルの用意が整ったのを確認した恵太郎から通信が入る。 「了解です、マスター」 それに短く応えるナル。 「…行きます、師匠」 「来なさい、ナル」 その言葉に、哀愁は無かった。 構えた銃鋼から爆音と共に光弾が放たれた。 上下に二つある銃口から交互に、凄まじい勢いで光弾と爆音を排出する。 しかし、光弾を撃ち出す事にナルの身体は凄まじい反動を受けていた。 『ナル、大丈夫か?』 恵太郎からの通信。 その声音には若干緊張の色が含まれている。 「…はい…ッ……問題、ありません」 銃鋼を撃ち続けながら、擦れた声で返答するナル。 『……もう暫く撃ち続けてくれ』 暫しの沈黙の後、恵太郎から続行の指令が下る。 「…了解」 それに簡潔に応えるナル。 その眼はアル・ヴェルだけを見据えている。 銃鋼から放たれる光弾はまさに雨の様だった。 しかし、それは反動によるブレで命中精度は良いとは言えないものだ。 その証拠に、アル・ヴェルは軽く身体を捻ったりするだけで大きな回避運動を取っていない。 が、背後の壁に命中した光弾は悉く被弾箇所を貫いている。 『ナル、銃鋼のテストは終了だ。お疲れ様』 恵太郎の通信と同時に銃鋼を停止させる。 「ありがとうございます、マスター」 支えていた刃鋼と銃鋼を下ろして応えるナル。 『…何か問題点は?』 「今のところありません」 『そうか、次は刃鋼だ。準備が出来次第好きに始めてくれ』 「了解です」 事務処理のような応答を繰り返す二人。 ナルは無表情で刃鋼を前方に突き出す様に構えた。 そして、ガチャリという音と共に刀身に規則正しく入った割れ目を境に分裂した。 紅と黒の刀身は何節にもわかれ、刀身同士を繋ぐのは複合ワイヤーのみ。 その間接部分ごとに自在に折れ曲がるそれは、最早剣では無い 床に分離した刀身が落ち、甲高い音を鳴らす。 それを確認したナルは左腕を高く掲げると、刀身の四分の一程が吊り下げられる。 ナルは左腕を振り下ろし、続けざまに右に跳ね上げ、そこから左に鋭く振った。 それと呼応して刃鋼が激しく波打つ。 そして、鋭く、速く、迸った。 刃鋼はまるで大蛇の様に蠢きながら、アル・ヴェルへと襲い掛かった。 伸縮自在の間接を持つそれは、瞬間的には10sm程にもなる。 そして、その先端部分は遠心力やらなにやらで相乗的に破壊力を増す。 ここでようやくアル・ヴェルが回避行動らしい回避行動を取った。 空中で脚に力を込めるようにしゃがみ込んで、刃鋼が目前に迫り自身に衝突すると言う瞬間に一気に翔けた。 その速度は神姫の眼を持ってしても図り知ることは出来ない。 それほどまでに、速い。 目標を見失った刃鋼は背後の建物を大きく抉る。 ナルはそれを確認し、左腕を大きく引いた。 それに呼応し、間接が縮まる。 一瞬で元の剣の形状へと戻った刃鋼を下ろし、前方に下りてきたアル・ヴェルを見据える。 『ナル、調子はどうだ?』 「…銃鋼ほどではないですが、反動が大きいです」 ナルは左腕を見ながら言った。 機械の腕に疲労に似た感覚が襲っているのだ。 恐らく、荷重に耐え切れないアクチュエータが悲鳴を上げたのだろう。 『なるほど、そこらへんは調整が必要だな』 恵太郎の言葉に、感情は込められていない。 「そろそろ良いかしら、マスター?」 アル・ヴェルが裕子に向かい通信を開いた。 その声には何かを待望する、そんな色が含まれていた。 「マスター……ボクもそろそろ我慢できないよぉ」 ナルの口調が変わった。 若干俯きながらも、その瞳は紅く輝いている。 『…良いわよ、アル・ヴェル。たまには羽を伸ばさないとね』 裕子の諦めたような、それでいて優しげな声が聞こえてきた。 「ありがとう…マスター」 アル・ヴェルはゆっくりと浮上しながら礼をした。 『ナル、お許しが出たぞ。好きなだけ大暴れしな!』 恵太郎は凄く嬉しそうだ。 「あはは、言われなくても……そのつもりだよぉ!」 そう叫ぶと同時に、ナルは銃鋼を構え、無数の光弾を穿き出した。 先程よりも雑で疎らな光弾の雨に、アル・ヴェルは羽鋼の出力を全開にして超高速で翔け回り、回避する。 その姿を目で捉えることが出来ないナルだが、それでも攻撃を止めない。 次第に光弾の及ぶ範囲が広くなって行く中、ナルのドップラーセンサーは確かにアル・ヴェルの姿を捉えていた。 「そこだぁ!」 支えていた刃鋼を左に大きく振り抜く。 刀身は伸びながらアル・ヴェルへと迫る。 ナルは銃鋼の欠点である集弾性の悪さを逆に利用した。 逆に光弾をばら撒く事によって、アル・ヴェルの逃げ道を塞いだのだ。 そして、動きが止まる瞬間を予測して刃鋼の攻撃を加える。 「なるほど、いい作戦ですね」 しかし、それはアル・ヴェルにはまだまだ通用しない作戦のようだ。 迫ってきた刃鋼を、アル・ヴェルは蹴り飛ばして凌いだ。 勿論、ただの武装では刃鋼を蹴り返す事など出来ない。 その秘密は、羽鋼にある。 羽鋼は電磁推進装置を利用した機動装備である。 従来のブースタータイプと違い、一種のバリアーによる反発力を用いるこの装備は爆発的な速度と運動性能を得る事が出来る。 そして、アル・ヴェルはこの反発力を刃鋼にぶつけたのだ。 「まだまだ脇が甘いですね」 一気に、一瞬でナルへと接近したアル・ヴェル。 ナルの息がかかるほどの近距離で一言言うと、ナルに強烈なローキックを浴びせた。 先程同様バリアーの反発力を乗せたそれはナルの巨体を軽々と吹き飛ばした。 それでもアル・ヴェルは攻撃を止めない。 吹き飛ぶナルに一瞬で追いつくと、ナルの顎を蹴り上げた。 再び軽々と上方へと吹き飛ぶナル。 ナルが最高到達点に先回りしていたアル・ヴェルは身体を横向けに回転。 そして、渾身の力を込めて蹴り落とす。 それは必殺の威力を孕む攻撃であり、喰らえば唯では済まない。 否。 唯ではすまないのは両方だった。 アル・ヴェルの脚がナルに触れる一コンマ前。 その瞬間、ナルの銃鋼はアル・ヴェルへと照準を定めていた。 爆音が響き、爆炎が渦巻く。 それと同時に両者は弾かれた。 ナルは床に、アル・ヴェルは壁に叩き付けられる。 銃鋼の光弾と羽鋼のバリアーの高エネルギーの衝突が爆発を引き起こしたのだ。 「あははぁ、やっぱ師匠は強いやぁ」 刃鋼を杖代わりにし、鉤鋼で体制を立て直すナル。 見た目は酷い損傷だが、その眼の闘志は消えていない。 「ナルも随分と肝が据わってきましたね」 壁にめり込んだ体を引き抜き、空中を踏み締めるアル・ヴェル。 しかし、その身体に損傷は見受けられず身を包む覇気も衰えない。 「さぁ、休憩はオシマイ。第二ラウンドだよぉ」 ナルは刃鋼を前方に向けたまま、左腕を深く引いた。 「休憩なんて挟むのも勿体無い」 羽鋼を大きく羽ばたかせ、前傾姿勢になった。 彼女達は武装神姫。 戦う事に、理由は要らない。 アル・ヴェルの羽鋼が瞬く。 度を超えたバリアーの過剰出力が強い光を伴わせる。 その速度は最早如何なる方法を取ろうとも、捉えきれるものではなかった。 だから、ナルは予測した。 左手を勢い良く繰り出す、一般に言う突きだ。 ただし、刃鋼の突きのリーチは10smオーバーだ。 アル・ヴェルは最高速度で飛翔した。 それはつまり機動性を殺すことだとナルは考えた。 そして目標は自分。 その道筋は一本道。 そこに、刃鋼を置いておけばどうなるか? 単純明快、正面衝突である。 しかし、アル・ヴェルの機動性はナルの思惑を遥かに凌駕していたのか。 アル・ヴェルに迫り来る刃鋼。 その衝突の寸前に、アル・ヴェルが進路を変えたのだ。 アル・ヴェルの羽鋼はいかに速く動いている状態でも、自在な機動を実現したのだ。 そして、最高速度のままナルに激突。 純粋な加速エネルギーだけの攻撃。 だが、それだけで神姫を粉砕するには充分すぎる破壊力を孕んでいる。 決まった。 アル・ヴェルは思った。 確実にナルの胸部を貫いていると。 自身の勝利が決定したと。 が、心のどこかでそれを否定したかった。 「あははぁ、やっと捕まえたぁ」 そして、それは否定された。 アル・ヴェルの脚は確かに貫いていた。 胸部をガードした銃鋼を貫いていた。 その上、鉤鋼でアル・ヴェルの脚をがっちりと掴んでいた。 「師匠…ボクの……腕は…三つあ…る…んだ……」 だが、アル・ヴェルの爪先がほんの少し、ナルの胸部を抉っていた。 すっかり暗くなった帰り道。 アリカと茜は帰路に付いていた。 「それにしても凄かったなぁ…」 アリカはナルとアル・ヴェルとのバトルを反芻している。 「私もアル・ヴェルさんのように強くなれるでしょうか…」 トロンベもバトルを反芻しているようで、小さく呟いた。 悲観的な言葉に対し、その声音は強い意志を感じさせた。 「ふふ」 その光景を見ていた茜が思わず笑い声を漏らした。 「何よっ、文句あるの!」 何となく気恥ずかしいのでそれに食って掛かるアリカ。 「ただ、アリカって変わったよねぇ、って」 アリカの目を真直ぐ見据えて微笑む茜。 その様子にいきなりしおらしくなるアリカ。 「変わったといえばアンタの方よ……今まで大学の研究室に行ってたなんて一言も言ってくれなかったじゃない」 俯きながら少し拗ねる様に言う。 「…アタシが先輩達の研究室に通うようになったのは丁度一年前からよ。その時、アリカが変わったと思っていたの。私の好きなアリカはもう居なくなったと思ったわ。私は寂しかった。その寂しさを埋めてくれるのは先輩達だったわ。だからアリカに言わなかったの。もし、アリカがずっとあのままだったら私はアリカを見限っていたわ」 急に真面目な口調で喋る茜。 「じゃあ、何で今更」 歩くのを止めてアリカに向き直る茜。 「私の大好きなアリカが帰ってきたからよ」 そう言うと、茜はアリカに軽く触れるだけのキスをした。 「…随分と久しぶりにしたわね」 顔を真っ赤に染め、そっぽを向きながらアリカは言った。 「ふふ、じゃあ久しぶりにアリカの家に泊まろうかしら?」 悪戯っぽく笑いながら歩き出す茜。 「マスター、トロンベに噛まれますよ」 それに空中散歩していたロンが喋った。 「わ、私はご主人様さえ良ければ…その……別に」 ロンの言葉に顔を真っ赤にしてトロンベは反論した。 「良いわよ…皆で泊まれば良いじゃない」 アリカは蚊の鳴く様な声で言った。 しかし、それは茜に耳にきっちり入っていた。 「じゃあ今日は大好きなアリカのお家でお泊りパーティね?」 軽くスキップをしそうな茜に、アリカは咆えた。 「気安く好きだの言わないでよっ!」 その顔はトマトの様に赤かった。 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/896.html
舞い踊る、白鳥の乙女達(前編) GWには遠い休日。私・槇野晶と三人の神姫は、秋葉原の神姫センターへ 足を運んだ。目的はただ一つだけ……3on3形式バトルでの勝利である! 武装運搬専用ケースも三人分の重量となり、この小さな躯には少々辛いが ロッテは無論の事、アルマとクララも三人共に戦う事を望んでいるのだ。 そうとなれば、“姉”たる私は全力で応えねばならない。そう言う物だ! 「あ、マイスターお帰りなさいですの~。参戦申請通りましたの?」 「有無、軽量級ランクの確認だけだったぞ。対戦ナンバーは、18」 「うんと……17番目との対戦ですね。えーと、相手の名前は……」 「……あれかな。“黒鳥の戦鬼”って登録ネームになってるんだよ」 そう言って武装を着込んでいるクララが示した電光掲示板には、確かに “黒鳥の戦鬼”なるユニット名と、所属神姫タイプが表示されていた。 私はここで、奇怪な事に気付く。相手神姫は三人とも同タイプなのだ。 それで“黒鳥”……どうやら、私達の商売敵とも言うべき相手かもな。 「なるほどな……精一杯蹴散らしてこい、“夜虹の戦姫”達っ!!」 「や、やこう?……えっと、それがあたし達のユニット名ですか?」 「……夜の虹、オーロラ。ボクらの三色も並べればそれっぽいもん」 「わたし達の二つ名だって全部“せんき”ですの。だから、ねっ?」 「深い意味があるんですねぇ~……分かりました、マイスターッ!」 準備も整い、程なくアナウンスが掛かって私達はブースへと移動する。 重量級ランク用の追加ポッドがあるそれは、本来多人数のエントリーに 対応する為のシステムを流用した物であった。なるほど、経費節減か。 さて、三人をエントリーゲートに入れて相手を確認……って待てッ!? 「灯!碓氷灯かッ!?貴様、こんな所で何をしているんだおい!」 「あ、灯じゃありませんな。碓氷なんてそんな人知りませんなっ」 「嘘を付け、そのバリトン用ボイスチェンジャーとサングラス!」 「う……お、お久しぶりですな。晶ちゃん、相変わらず厳しくて」 「そう言う貴様は、まだ人前が怖いのか。不審な幼女だぞこれは」 “目”を相手に見られたくないと、蛙の様な巨大サングラスを着用し、 わざわざ機械で鈴の鳴る様な可愛い声を、渋いバリトンに変える幼女。 碓氷灯。私の遠縁の従姉であって、年に数度も合わぬ様な遠い間柄だ。 この通り変人で、首都圏を半端に離れた山奥から滅多に出ぬ臆病者だ。 ……待て、誰だ『お前も十分変人だ』とか洩らしたのは。死にたいか? 「幼女って、晶ちゃんも十分幼女じゃないですかいな……って、あわわ」 「灯……貴様は私を怒らせるのが何時も上手だな、後で梅干しだぞッ!」 「えーと、君達そろそろ着席してもらえるかな?機械はセット出来たし」 見かねたセンター係員に窘められ、私達はお互いオーナー席に……ん? なんで灯が“相手側の”オーナー席に座るんだ?……まさか、奴が!? どういう事なのか良く分からんが、戦いの手を緩める事は絶対できぬ。 試合開始の合図を待ち、地形確認を行う……月面基地、低重力環境か! 『夜虹の戦姫vs黒鳥の戦鬼、サード3on3・第9戦闘、開始します!』 「よし。散開して、αをベースに柔軟に対応してくれ」 『はいッ!!!』 「ミラ、イリン、ティニア。教えた通りに、できるかな?」 『姉様、自分に自信を持って!』 “Heiliges Kleid”姿の三姉妹が散開するした後、相手を確認する。 それはさながら戦乙女を標榜する此方に、挑戦するかの様な娘達だ。 リミテッドエディションのブラック・アーンヴァルをベースとして、 流出した第五弾のパーツを多分に盛り込んだ、同型機の神姫が三人。 意図的なのか、遠いとは言え親族故の共鳴なのか。複雑な心境だな。 「そう……この娘らの御陰で、灯は変われたのですよねっ」 「……なるほど、そう言う事か。だが手加減はせぬぞ!」 アーコロジー(完全環境都市)化された月面基地に聳えるビルを、三人の “黒翼の天使”が飛び越えていく。通常の20%以下に設定されている 重力係数は空を飛べない神姫に福音となる物の、デメリットとて多い。 射撃武器の弾道計算を変えねば命中精度が落ちるのは、その代表格だ。 「この環境は、ちょっと不安ですの……まずは、一射ッ!」 「きゃっ!?ミラ、怒りますよ!ええいっ!」 「きゃあっ!ここは……しまった、挟撃ッ!?」 「まずは、一人。イリンが掴まえた……っと!!」 案の定、普段は精緻なロッテの“ムラクモ”による狙撃弾も逸れた。 重力設定による数値変動は計算していたが、まだ足りなかったかッ! 慌てて後退を図るビル上のロッテを、二人目の“天使”がホールド。 完全に宙づりとされてしまった。相手を一人ずつ潰す作戦か……!? 「ティニアのキャノンランサーで、往生してくださいッ!!」 「そうは、行きませんッ!!やぁぁーっ!!!」 「きゃう!?み、ミラッ!」 銃剣……というよりはレーザーキャノンを組み込んだ槍が向けられる。 だがそうはさせじと、ビルを駆け登り加速したアルマが殴りかかった。 “マサムネ”の一撃を受けて怯んだティニアはあっさり後退する。だが ロッテとイリンを中心とした反対側には、狙いを付けるミラがいたッ! このままではロッテが危ない。そう判断して叫ぶ前に、彼女が動いた! 「いい加減、お姉ちゃんを降ろしてほしいんだよ……イリンさん!」 「うきゃ!?い、糸が脚に……きゃあああぁっ!!!」 「ミラちゃん!?く、ううう~……!」 「ブースター全開、一斉に“プラグアウト”して離脱……だよっ!」 「きゃあぁぁっ!し、痺れる~!?」 イリンの脚に“ヘル”を絡みつかせたクララが、遠心力を付けながら 二人に指示をする。“シラヌイ”によるスタン攻撃も併用しながら、 立て直しの為、ロッテへの照準補正を極力妨害しようという狙いだ。 その指示に応じて二人はバックルに手を添えて、クララも同調した。 それはイリンを振り回し終えたクララがミラに近付く、好機だった! 『Plug-out!』 「きゃあああぁぁっ!?」 「よし、Y時3smに全基投下する!移動してくれ!」 弾け飛ぶ硬質の羽衣を浴びて、“天使”達に確実な傷が与えられる。 決して致命傷ではないが……“SSS”を投下するには十分な隙だ。 Y時……即ち、三姉妹それぞれに対して“Y字”方向3smの所へ、 サイドボードにセットした三基の追加装備“SSS”を、投下する。 「痛ぁ……って、何あれ?ぷちマスィーンズ!?」 「“スヴェンW”!わたしの所へッ!」 「“ファルケンS”!あたしはここですよ!」 「“ビルガーG”、ボクはこっち……!」 「クェェェェーッ!!!」 ──────集う三羽の翼。これが、戦乙女の頂点なの! 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/778.html
激烈なる拳──あるいは決勝その一(前編) “鳳凰カップ”二日目。ボク達ロッテお姉ちゃんとクララ……梓は、 神姫バトルの決勝ブロックまで、進める事になったんだよ。サードの ロッテお姉ちゃんが何故……とか色々言われるけど、こればっかりは 運とロッテお姉ちゃんの弛まぬ努力、としか言えないもんね。うん。 でも此処からは、本当に強い人しか残れない。気が抜けないんだよ。 「んしょ……梓ちゃん、そう言えば最初の相手はどなたですの?」 「誰、だったかな……オーナーは、柊咲矢さんって言う男性だよ」 「柊さん?それって確か“神姫部”の……って、あれですのッ!」 “フィオラ”姿のロッテお姉ちゃんが指さした先から駆けてくるのは、 渡瀬美琴っていう部長さんが率いる“黒葉学園神姫部”の面々、数名。 一回戦は個室の控え室じゃないから、こうして他の人と話す事もOK。 でもその手には……書類?なんだかボク、嫌な予感がするんだよ……。 「ふふん。貴女がマイスター・槇野晶の妹さん、とその神姫ねッ!」 「そうだけど、何か用かな?特に柊さんと……その後ろの千空さん」 「ひっ!?……あうあうあう……やっぱり止めましょうよ皆ぁ……」 「あぁいやいや、俺自身は特に用がない。良い勝負をしよう、位か」 「そう。用があるのは私なのよ、槇野梓さんとロッテちゃんッ!!」 何か懇願する千空さんを盛大にスルーしつつ、部長さんが私に詰め寄る。 その手には、二枚の“誓約書”。どちらにもお姉ちゃんのサイン、そして 多分美琴さん直筆のサインが、契約の署名として印されていたんだよッ。 「……これ、何かな?お姉ちゃんの署名があるけど……?」 「えっと、“当方の敗北時、──サイズの服を無料で”?」 「わかんない様ね……いいわ、全部説明してあげるッ!!」 そのサイズ指定に、ボクもロッテお姉ちゃんも違和感を隠せないんだよ。 だってそれは人間用の指定。しかもお姉ちゃんが今着ているのと、同じ。 だからボクらは大人しく、美琴さんの解説をじっと聞く事にしたんだよ。 『よもや貴様の身内と戦う事になろうとはな、千空……とその保護者』 『ああ宜しく、晶ちゃ……って痛ッ。千空、どういう人なんだよこれ』 『この間エルゴに一人で行った時、何故か目を付けられちゃって……』 『有無……そうだ、柊とやら!ここは一つ、私と“賭け”をせぬか?』 お姉ちゃんの提示は、“凪千空を一日貸せ”……ちょっと嫉妬するもん。 普通なら乗らない様な話なんだけど、目の前の美琴さんは違うらしいね。 『じゃあ、そっちはそうね……負けたらオーダーメイドで服を作って!』 『ふぇ、ええええぇぇっ!?美琴先輩、それって……もしかして……?』 『フフフ……もちろん、着るのは千空ちゃん。千空ちゃん用の服よ!!』 『ええええええぇぇぇぇーっ!?美琴先輩、なんで僕用なんですか!?』 『でもね?貴女には絶対!見せないわよ!!ってか見ちゃダメッ!!!』 “千空ちゃんを賭けるってのはそれ位の事なのよ!”と息巻く美琴さん。 お姉ちゃんの歯軋りする表情が目に浮かぶもん……何せ、千空さんは妙に 気に入られている。それがどういう感情なのかは、ボクにも分からない。 でもきっとお姉ちゃんなら、その挑発に……こんな感じで応えるんだよ。 「“よかろう、ならばフルオーダーを無料で作ってやる”……かな?」 「そうそう、って良く分かるわね。どう見ても外国人だけど流石は妹」 「それで、このメモ用紙が互いのチップ代わり……ですの?美琴さん」 「当然よロッテちゃん!負けたら誓約書は、その場で破いてもらうわ」 そうしてボクには、勝利時の誓約書が渡される。その紙面には確かに、 “Akira・Machino”の筆記体サイン……“Makino”じゃない事からも、 これがお姉ちゃん……マイスター(職人)のサインである事は、明らか。 つまりこの時点で、ボクらは名実共に“お姉ちゃんの名代”なんだよ。 お姉ちゃんの望みが例え不明瞭でも、もうボクらは負けられないもん。 「ハン、どうするサード野郎?ビビったなら降りていいんだぜ!」 「……降りる事など有り得ませんの、お姉ちゃんの意志ですから」 「上等じゃねぇか。その鼻っ面、へし折ってやるぜサード野郎ッ」 「セカンドのハンゾーさん、お互い良い勝負をしましょうですの」 「良い勝負?セカンドの俺に出来ると思ってるのか、おめでてぇ」 次の対戦相手はマオチャオタイプと聞いていたから、この強気な神姫が 多分、そのハンゾーさんなんだよ。ランクとしてはまだサードの中堅に 存在しているロッテお姉ちゃんを、甘く見て……はいない様子だもん。 正確には……誰でも全力で叩き潰す方針に変わりのない、強固な意志。 だからボクらを煽って、自分の強さと優位性をアピールしてるんだよ。 「ここまで上がってこられたのは運ですの、でも運勢も力の一つ」 「つまり、俺にもラッキーで勝とうってか?ナメられたモンだぜ」 「……いいえ。運も実力、実力も運。勝てる所まで、勝ちますの」 「よくわかんねぇ……けど、勝つのはセカンドの俺だ!いいな!」 小難しい言い回しだけど、ロッテお姉ちゃんは“常に全力を尽くす”。 そう言いたくてハンゾーさんに笑ったんだよ。負けるかもしれないけど それで悔いの残らない様に、全力全開自分の力を出し切ります、って。 そして別れ際、ボクは意気消沈している千空さんに話しかけたんだよ。 「……災難だったんだよ、千空さん」 「えうえうぅ……タスケテクダサイ」 「それは、無理。諦めてほしいもん」 ──────可哀想だけど、もう賽は投げられたんだよ? 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/487.html
戦うことを忘れた武装神姫 その13 ・・・その12の続き・・・ 「おつかれー! いやー、お見事!」 シールドが解除され、久遠がイオに手をさしのべる。イオは酒瓶を片手に持った まま恥ずかしがりながら駆け寄ろうとするが、瓦礫に足を取られ見事転倒。さら には、手にした酒瓶の栓が開いてしまい、頭から酒をかぶってしまう。 「ふえぇ・・・やってしまいました〜。」 半泣きで酒臭いイオの姿に、わき上がる笑い。と、かえでが、ギャラリーをかき 分けて近づいてきた。その姿に先に気づいたイオが、 「はじめまして、かえでちゃん。 お話はリゼから聞いています。ちょっと変な 形にはなっちゃったけど、敵はとったつもりです。」 酒臭いまま久遠につまみ上げられ、かえでにご挨拶。かえでは目を輝かせていた。 「すごかったです、イオ・・・さん! あんな技、見たことも聞いたことも無い ですよ!! もう、あんなにかっこよくやってくれるなんて・・・ 本当に ありがとうございます!!!」 久遠と顔を見合わせて苦笑いのイオ。 「え、ええ・・・まぁ・・・。 夢中でしたから・・・。」 「それはそうと、どこかこいつを洗える場所ないかなぁ。」 「えー! 私、洗われるんですかぁ?」 「洗わんでどうしろと。このままだとベトベトになっちゃうぞ。」 「あの・・・拭けば大丈夫ですから・・・」 「だーめ。 あ、そこに給湯室があるんですか? ちょっとお借りしますー。」 気づいた店員の案内で、給湯室へイオを連れていく久遠。 「あ、だめです! 洗っちゃうと翼が傷む・・・いえ、その・・・きゃー!!! 濡れるのはイヤーーー! だめーーーーー!!! だぇ・・・ ブクブク・・・」 給湯室から響いたイオの叫びが、徐々に小さくなる。イオ、戦場から洗浄へ。。。 ・ ・ ・ ・ ・ と、こちらサイトウ側では、ちょっとした異変が。 「おい・・・早く戻ってこい!」 がっくりとうなだれたままのディサ、サイトウがいくら呼びかけてもフィールド の縁から、それ以上サイトウに近づこうとしなかった。 「いい加減にしろ。 ・・・仕方ない、あいつを回収してこい。」 「イエス、マスター。」 軽装の兎子がディサの回収に向かう。 「ディサ、命令です。今すぐ戻りなさい。」 「・・・。」 兎子が差し出したてを払いのけるディサ。 「ならば、強制執行します。」 「触らないで!」 その声に、兎子、サイトウだけでなく、近場にいたギャラリーも静まり返った。 「もう・・・私はあなたの神姫であることが我慢できません!」 立ち上がったディサは、唖然とするサイトウに向かい、きっぱいと言い放った。 「あの日、彼の『黒』が、あなたをクサレ扱いした理由がよくわかりました。」 「お前、何が言いたいんだ? 俺に向かって何を言っているのか、わかって いるのか?!」 「・・・やはり、私は貴方の神姫ではありません。 さようならっ!」 止めようとする兎子に肘鉄を喰らわせ、その隙に、あっという間にその場から 逃走。 自慢の足の速さで、あっというまにいなくなった。 「待て! どこへ行く!!」 追いかけるサイトウ、しかし多すぎる程のギャラリーに阻まれてディサを見失 ってしまう。 あまりに一瞬の出来事に、何が起こったかギャラリーも把握が 出来なかったらしい。。。 「くそっ・・・。」 舌打ちをしながらサイトウが戻ってきた。 「マスター、どういたしますか? 追跡しますか?」 兎子が尋ねる。 「一体ぐらいいなくなっても気にしねぇよ。 代わりはいくらでも居るんだ。 それより、次はお前に行ってもらうからな、準備しておけよ。」 「了解しました。」 兎子は、黙々と準備にかかる。 ・・・が、応援団の呼びかけにも返答が出来 ない程、明らかに動揺を隠せないでいるサイトウに、一抹の不安を覚えていた。 ・ ・ ・ ・ ・ 「相変わらず水が嫌いなんだから。」 モニター席で待つリゼが呟いた。横ではエルガがエルゴブランドの神姫ドリンク、 ロボビタンRをすすっている。 「にゃーはおフロ、好きだよ?」 「エルガ、貴方のことではないんですよ。・・・どうやらいつものイオに戻った ようですね。」 クレイドル上では、シンメイが出番に備えて装備を整える。 「そ、そんな軽装でいいんですか?」 その姿を見たティナが驚きの声をあげた。 「いいんです。私は、武具を使うことを好まないので。これで十分なんですよ。」 シンメイが装着したのは、黄色くペイントされた狗駆と心守のみ。どちらも手が 加えられており、薄く削られて、のっぺりとした見た目になっている。 「メカニックは手先が命ですからね。 道具・工具類を器用に扱えない万武は、 滅多に使わないんです。」 最後にセットするヘッドユニットも、通常のものとはちょっと形が違っていた。 色といい形といい、それはまさしく・・・狐。 しっぽも狐型に改造されている。 シンメイが装備と同期を取る。 と、胸の所にぽわーっと浮かび上がる緑の十字、 狗駆には「安全第一」の文字。 最後に、工具箱を背中に装備。 「おぅ、お待たせ。 ・・・シンメイ、やっぱこの装備なんだ。」 洗濯されて半ば放心状態のイオを手に久遠が戻ってきた。久遠は、ぐったりして いるイオをリゼとエルガに任せ、シンメイを手に乗せた。 「私にとっての、最強の装備をしたつもりです。」 「だな。 うん、あいかわらず似合っているよ。 良い良い。」 「久遠さん、これ、なんて装備なんですか?」 興味津々のティナ。かえでは持参したカメラで手に乗るシンメイを激写している。 「名前は・・・どうする?」 「そうですね・・・『工臨壱式』なんてどうでしょう。」 「ふむ、・・・自分の型式名に引っかけたのか?」 「・・・。」 ぽっと頬を赤らめて無言になるシンメイ。だが、しっぽは嬉しいのか、パタパタ と反応。。。 久遠がモニター席からフィールドへ向かおうとする・・・と、色が黄色ベースと 目立つこともあり、またもやワラワラと人垣が出来る。 「写真撮影は全試合終了後におねがいしまーす!!」 ついに、店員が全員動員され、誘導や整理を始めた。久遠が見回すとありえない ほどの人数になっている。 「な、なんだこりゃ・・・」 「どうやら、『妙な連中が勝っている』と、ネット上なんかで祭りになっている みたいです。私たちもこんな事はじめてでして。。。 不手際申し訳ない。」 久遠を誘導する店長が教えてくれた。 (・・・そういや、この試合は公式で中継もされているんだっけ。。。) 今更ながら、恥ずかしさがこみ上げてきた久遠であった。 ・・・>続くっ!>・・・ <その12 へ戻る< >その14 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2737.html
「今日はどこに行くの?」 道中、華凛にそう尋ねた。よくよく考えたら行き先を聞いていない。華凛はその問いに対する答えをあらかじめ用意していたようだ。すぐに答えが返ってくる。 「あたしと樹羽が初めて一緒に行ったプレイス」 それだけで、これからどこに行くのかがわかった。 私は華凛の手を握ぎり直した。あのときは手を引かれて行ったけど、今度は並んで行きたい。華凛ももう一度確かめるように手を握り返してくれた。 駅前に行き、電車に乗る。そこから歩いて数十分、目的の場所が見えてきた。 夏休みが故に沢山の人で賑わうそこは、一年前に来たばかりの場所。長いレールの上を、猛スピードで駆け抜けるコースターや、大きな観覧車。 私と華凛が初めて一緒に行った場所、それがここ、遊園地だった。 その日は目一杯遊んだ。もう遊び倒した。 定番のジェットコースターや、失神者続出のお化け屋敷。他にも沢山のアトラクションを回った。 樹羽はああ見えて怖がりで、お化け屋敷なんてもうあたしの腕にしがみ付いて大変だった。ジェットコースターも以下同文。 それでも、樹羽は笑ってくれた。あんなに楽しそうに笑う樹羽を、あたしは今まで見たことがなかった。 やっぱり、シリアと樹羽を会わせたのは正解だった。あの子も、あんな風に笑えるようになっていた。あれが、彼女の本当の姿なのだろう。後は、樹羽の頑張り次第ってところかな。 神姫バトルの方でも、樹羽の成長は素晴らしかった。絵美ちゃんに勝ち、東雲に勝ち、楓さんに勝ち、朱野くんにも勝ったと聞く。おまけに宮下さんに斬鉄剣を出させたと聞いた。この半月、よくここまで成長したものだ。それも、シリアがいてこそだろう。 樹羽とシリアは最高のパートナーだ。この二人ならあるいは、もしかしたら大会なんかでも名をはせることが出来るかもしれない。ちょっと高望みし過ぎかな? 樹羽はもう一人で友達を作れるだろう。そこには、あたしが介入する余地なんか無いはずだ。 ああ、もう日が沈んでいく。楽しい時間はいつも急ぎ足で去っていくのだ。 でも、もう大丈夫だ。あたしはもう十分楽しんだ。 だから―― 「今日は楽しかった」 遊園地からの帰り道。私たちは公園を通っていた。既に日は傾き、地平線の彼方に差し掛かっている。 今日はとても楽しかった。ジェットコースターやお化け屋敷は怖かったけど、華凛と一緒だったから楽しかった。 「あたしも楽しかった」 華凛は本当に満足そうに言った。気付けば、その足を止めて笑っていた。 「華凛?」 笑顔でいる華凛の後ろに沈んでいく太陽が映る。その姿は、今にも消えてしまいそうで、とても不安定だった。 「樹羽、周り見て、何か違和感ない?」 華凛が突然そんなことを言い出す。言われた通り周りを見てみたが、木があったり遊具があったり、いたって普通の光景のように思えた。 しかし、そこには何かが足りなかった。本来そこにあるべき、声。子供たちの笑い声が、無いのだ。 子供たちの声だけじゃない。ありとあらゆる声が、消えていたのだ。まるで、この世界には私と華凛しかいないかのように。 「誰も、いない?」 「うん、今のこの世界には、あたしと樹羽しかいないわ」 「……え?」 私と、華凛だけ? 「樹羽、あたし幸せだった。樹羽に出会えて、樹羽の親友になれて、一杯遊べて、幸せだったの」 「華凛?」 「だから……」 華凛は独白するように呟いた後、とびきりの笑顔を浮かべた。 「もう、満足」 次の瞬間、世界から色が消えた。 緑が一杯だった木からも、真っ赤に染まった町並みからも、私と華凛以外の色が消えてしまったのだ。 それだけではない。太陽があった場所。そこからまるで崩れるように漆黒が、闇が、無が広がっていった。これは、真夏の雪なんかよりも異常な事態だった。 なのに、華凛は笑ったまま動かない。 「何……どういうことなの華凛っ」 華凛は私の問いに静かに答えた。その存在感は、かなり希薄なものになっていた。 「ここはね、あたしのわがままで出来た世界なの」 「わがまま……?」 「そう、樹羽が一人でもちゃんと友達が作れるようにって言うあたしの願いで出来た世界。言わば講習期間とでも言うのかな?」 華凛が言った言葉は、私には理解出来なかった。まるで、小説のような話。華凛から伝えられた真実は、とても信じられる内容ではなかった。 今日、8月1日に華凛の家は炎に包まれた。原因はわからない。問題は、華凛は逃げ遅れてしまったと言うこと。 「周りは炎だらけでね、煙吸っちゃって倒れたのよ。で、薄れていく意識の中、あたしは自分のことより、暗い部屋で独りぼっちの親友のことを心配したって訳」 華凛は自重気味に笑う。そんな状況になってまで、私のことを? 華凛の話は続く。それは、今日と言う日から、華凛が久しぶりに私の元に現れた7月1日までの話。 そして、今日に至るまでの話だった。 炎に包まれながら、あたしは樹羽のことを想った。あの子の繋がりはあたしだけ。あたしが死んじゃったら、樹羽はもう二度と立ち上がれないかもしれない。だから、あたし以外の繋がりを見付けてあげなければいけなかった。 あたしは叫んだの。心の中で。 そしたら、何かが応えてくれた。それは段々と膨れ上がっていって、あたしを飲み込んだ。 気が付いたらあたしは立っていた。もう過ぎ去ってしまったはずの7月1日に。 そこであたしは理解した。この世界がどんな世界なのか。どんなことを目的として創られたのか。 これから、何をすればいいのか。 あたしは真っ先に樹羽に会いにいった。元の世界ではしなかったことを、あたしはこの世界でやった。 樹羽に、あたし以外の繋がりを作ってもらうために。 その手段として、あたしは神姫を選んだ。一番伝え易かったし、一番の近道だった。放って置くわけにはいかない訳ありの神姫を樹羽に託すことで、樹羽の成長を促した。 あたしの思惑通り、樹羽はどんどん人と繋がっていった。 そして、何の問題もなく、今日と言う日を向かえた。 雪が降っていた。積もることの無い世界の終わりを告げる雪は、世界を白く染めていく。 今語られた内容は、とても頭に入ってはこなかった。だが、この現状を説明するには十分だったのかもしれない。 つまり、この世界は私の知る世界ではない。 信じられない、なんて言っている暇はない。既に地平線の彼方、そして空から世界の終わりが近付いているのだ。 「最後に樹羽と話したくて、周りの人消してさ、やっと時間作って、あと何話せばいいのか、わからないや」 華凛は笑っている。困った様に、それでも笑っている。 「この世界は、消えるの?」 「でしょうね、あと数分ってところかしら」 「華凛も、消えるの?」 「元々死にかけだったしね。消えるって表現であってるかも」 「……それはもう、どうにもならないの?」 「……ならないわ、残念だけど」 華凛はまるで他人事の様に淡々と、そして笑っている。 「なんで……笑っていられるの?」 「……だって、笑ってなきゃ、樹羽が安心して前に進めないじゃない」 華凛は笑い続けている。そんな顔を見ていたら、痛々しくて、見ていられなくなる。 怖いわけがない。この世界の消滅=死、なのだ。 なのに、華凛は私のためを思って、必死になって自分の想いを押し殺している。 「かり……」 「来ちゃダメ」 私は駆け出そうとした。それを、華凛に止められる。 「樹羽は前に進まないといけないの。私の分まで、ちゃんと進んで」 「華凛……」 私はその場に蹲って泣いた。親友を救うことができない自分が、情けなかった。すぐ目の前にいるのに。手を伸ばせば、届きそうなのに。 何もできない自分が、惨めだった。 「嫌……嫌だよ……」 想いがとめどなく溢れる。それは決してどうしようもないことなのに。言っても、華凛を困らせるだけなのに。 「もっと……もっと華凛と一緒にいたいよ……もっと華凛と話しがしたいよ……もっと……もっと……」 視界が涙で歪む。拭っても拭っても、涙は涙腺から溢れてくる。 「……まったく、最後まで世話がかかるわね」 「だって……だってぇ……」 「あのねぇ……」 気付けば華凛はまたハンカチを差し出していた。顔をあげれば、そこには華凛の顔がある。 涙でくしゃくしゃになった華凛の顔が。 「あたしだって……あたしだって樹羽ともっと一緒にいたいのよ! もっと沢山話したいのよ! なのに何で死ななきゃいけないの! ワケわかんないわよ! 理不尽よこんなの!!」 押さえていた感情が、漏れ出すを通り越して溢れ出す。一度に大量の感情が吐き出され、後はすすり泣く声が辺りに響いた。 「華凛……」 「……もう、時間よ」 落ち着きを取り戻した華凛が言う。気付けば黒と白はすぐそこまで迫っていた。 私は、前に進まないといけない。ここで消えてしまう華凛の分まで、しっかりと。 「……私は、泣いてちゃだめだよね? 前に、進まなくちゃ、だめなんだよね?」 「そうよ、元の世界であたしがいないからって、死んだりしたら許さないから」 その時、意識が遠くなるのを感じた。世界が消える時が来たのだ。 もう一度華凛の顔が見たくて、顔をあげた。私は何かを言った。口は開いたが、何を言ったのか、自分でもわからない。華凛は最後ににっこりと笑った。 「ありがとう、樹羽。さよなら」 その言葉だけが、意識の闇の中に響きわたった。 「あ……」 暗い部屋で、私は一人目が覚めた。一ヶ月はカーテンを閉めきったままの真っ暗な部屋。そこは、私が歩んできた、外と切り離された世界だった。 体を起こす。埃っぽい机の上にある時計の日付には、こう書かれていた。 8月1日(月) 戻ってきたのだ、私は。華凛のいない世界へ。 「うっ……」 また視界が歪んだ。華凛はもう、いない。もう二度と、会えない。 もう二度と、声を聞くことすらできない。 声をあげて泣いた。小さな子供のように、大声で泣いた。布団に顔を埋めて、泣いた。涙が枯れてしまうまで、私は泣いた。 やがて涙は枯れてきた。私は、前に進まないといけない。華凛の分まで、歩いていかないといけない。 それが、親友の最後の願いだから。 「前に……進むんだ……」 私は自分のベッドから出た。一ヶ月まともに動いていなかったため、それだけでも大変な作業だった。 私は部屋の扉の前に立った。その取っ手に手をかける。 一人でも、歩いてみせる。華凛の願いを、叶えてみせる。 私は、部屋の扉をゆっくりと開けた。 第十二話の2へ 引きこもりと神姫 Fin? トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/97.html
メインキャラ 藤堂 亮輔(トウドウ リョウスケ) イメージCV.千葉 進歩 25歳。 神姫関連の下請け会社(業績は良い)に勤務している。 10ヶ月前の騒動の末、やっと茉莉と結婚したが実質はリンも"妻"と認識している。 新婚なので周りからは冷やかされたりすることが多い。 それでも仕事運はあるのか、半年前から企画したプロジェクトが成功を収めた結果。 昇進も近いのでは?と社内で噂になっているらしい。 冬のボーナスを貯めておいて、結婚と同時に夢のマイホーム(もちろんローンではあるが)とマイカー(コチラはキャッシュだったそうだ)購入を実現した。 なお、親には「早く孫が見てみたい」と脅されているが、茉莉もまだ20歳になったばかりなので子作りは早いと思っている。 リン(悪魔型 ストラーフ) イメージCV.神田 理江 亮輔の買った初めての神姫であり、良きパートナー。 亮輔と結ばれたことで、以前のように気持ちを押さえ込んでおく必要が無くなったので礼儀正しいのは以前のままだが感情表現がさらに豊かになった感じがする。 亮輔を侮辱するヤツは絶対に許さない。 バトル時は「燐」で登録されている。 スタイルはレッグパーツの脚力を生かした変幻自在の動きとエアリエル技。 基本的に接近戦仕様の武器しか扱わない。というか射撃武器は基本パイソン357マグナム2丁のみで、グレネードランチャーもゼロ距離でしか使わないため射撃武器として数えていない。 エアリエル技には「烈空」、「隼」とった漢字の名称が与えられている。 戦闘においいての正々堂々とした戦いぶり故か、「黒衣の戦乙女」といった二つ名をもっている。 現在セカンドリーグの所属。通算戦績は五分五分といった感じだが最近は連勝中。 藤堂 茉莉 (トウドウ マツリ) イメージCV.佐本二厘 亮輔の幼なじみであり親同士が決めた亮輔の許婚だったが、この度めだたく亮輔と結婚することになった。 小学時代に1度重い病気になり(亮輔は妹のようにかわいがっていたからほぼ毎日見舞いに通った、これが婚約の原因だと思われる)一年遅れで進学した。 そして1年遅れで大学に入ったが結婚により中退。亮輔の側にいることを優先した結果らしい。 なお新居の間取りや内装は全て茉莉の好みで揃えられている。 ティア (天使型 アーンヴァル) イメージCV.ゆかな リンより半年遅れて亮輔の家族になった神姫。 彼女は以前ルクレツィアという名でサードリーグ中のトップランカーの神姫として名をはせた。 プリセットの都合上亮輔を「ご主人様」と呼ぶ。 多少のレズっ気があるらしく、リンを「お姉さま」と呼び慕うほどである。 オールラウンダーだが近接戦闘が好み。ただエモノが鎖だったり鞭だったりして周囲の目を(別の意味で)引く。 まだサードリーグを脱出していないが実力ではセカンドレベルである。 あと1回の勝利でセカンド昇格という所まできている。 サブキャラ 小山 イメージCV.関 智一 イベントで急遽開催された新人戦の選手。 亮輔を勝手にライバル視しているが戦績は芳しく無い模様…… ちなみに10話にて茉莉の大学の先輩であったことが判明する。 今は茉莉に叶わぬ恋(いろんな意味で)をしている。 レオナ イメージCV.水橋かおり リンの初陣の相手、犬型のハウリンタイプの神姫。 おとり作戦で燐を追い詰めるが、亮輔を侮辱したことで怒った燐に倒される。 あの新人戦から負けっぱなしだったのだが、それがコアと素体の接続部付近の不具合であったことがリンの分析と亮輔の質問によって判明。 それが解消されてからは本当の能力を発揮できるようになったらしくセカンドリーグへの道を爆進中のはず。 ただ、予想外の事態に弱い のは相変わらずのようだ。 SSF(ダブルエスフォース) 村上 静菜(ムラカミ シズナ) イメージCV.久川 綾 SSFの実働部隊の隊長であり局長も勤めている。 まだ30半ばといった風貌だがキレる女性である。 ファム(悪魔型 ストラーフ) イメージCV.小林 早苗 静菜をマスターとする神姫。実動部隊のリーダーであり、自らが斬り込んでいくアタッカーを務める。接近戦では右に出るものはいない。 東 一(アズマ ハジメ) イメージCV.中田 譲治 静菜の側近であり、情報収集、解析が主な役割。 基本的に用件以外は口にしない無口な男。 エイナ(犬型 ハウリン) イメージCV.青山 ゆかり 一をマスターとする。もちろん得意は状況分析や総合的な指揮。 バックアップ要員も勤めるが近接戦闘も意外と得意。 境 勇気(サカイ ユウキ) イメージCV.宮田 幸季 SSFのムードメーカー的存在。普段は一のバックアップが主だが静菜の不在時など、時には自ら率先して部隊を指揮することもある。 メイ(猫型 マオチャオ)イメージCV.南 央美 猫型にしてはとても珍しい無口な神姫。 マシンガンやグレネードランチャーなど派手な武器が好み。 ヘッドセットに改良が加えられており、トラップ探知などサーチ能力が高い。 大山 樹 (オオヤマ イツキ) イメージCV.氷青 中性的な顔立ちの女性。 トラップ設置、解除が趣味。 あんまり感情を表に出さないが無口というわけではない。むしろ実はおしゃべりらしい。 セリナ(天使型 アーンヴァル) イメージCV.安玖深 音 樹の神姫。 とっても元気な性格で頑張り屋だが、ドジをふむとき(実戦では無い)もある。 射撃センスは隊の中で1番。 黒田 健三(クロダ ケンゾウ) イメージCV.立木 文彦 SSF中で唯一、リアルでの犯人グループ制圧においてリーダーを務める。 基本的に汚れ仕事が多いが、任務をしくじったことは1度も無い。 キャル(兎型 ヴァフェバニー) イメージCV.田中敦子 健三の神姫であり、SSF創設前から健三とともに時をすごしてきた。 隊で1番のベテランであり、近接戦闘から精密射撃までなんでもそつなくこなす。 今の所は一番危険の伴うアタッカーをファムと共に務めることが多い。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1336.html
山と森の台、響く神の音(後半) まずは信州名物・蕎麦を昼食に供する為、国宝・松本城の方へと赴いた。 流石に他の有名な城程ではないが、なかなか風情があって良い天守閣だ。 その正門近くには、よい蕎麦屋が幾つか有ると聞く。その一店を訪ねた。 人当たりの良さそうな所謂“おばちゃん”が、私達を座敷へと案内する。 「もし、ざるを……二人前もらおうか。出汁は小分けに、四人前頼もう」 「四人……?そっちのお人形さんまで食べるのかい、こりゃ珍しいねぇ」 「まぁ、普通ではないがな……?それより灯、お前は何を食べるのだ?」 「あ、ええと……ミニセット一つ。この娘らの分は、いらないのですな」 「あら、可哀想じゃない~?ああいいのよ、ここはおばさんに任せてっ」 灯が『ぅ゛ぁ゛~……』と止めるのも聞かず、おばちゃんは勝手に注文を 書き換えて、厨房へと入っていってしまった。肝心な所で押しが弱いな。 まぁ、この速度で進化を続けていくのならば何れは克服出来よう。有無。 「なぁ、喰えるのか灯よ?先程、存分にトマトバーガーのセットを……」 「……ですなぁ……頑張りますが、厳しいのですな……う、う゛ぁぁッ」 「ご、ごめんなさい姉様!私達も人間の食事が出来たら、こんな事にっ」 「そーよ、そういえばなんで貴女達は物が食べられるのよ~!?きー!」 「さぁさぁ晶さん、貴方が洗いざらい吐いて!どうして食べられるの!」 私は一つ観念して、己が“妹”達に降りかかった因縁を解説してやる。 東杜田技研において修理を受けた際に得た、“特別な機能”である事。 欲しいからと言って一朝一夕に備わる機能ではなく、偶然であった事。 そして当然、私が頼んでも実装してもらえるかは五里霧中である事を。 それを聞いて、灯達は納得した様なしない様な微妙な表情で反芻する。 「マイクロマシンの……うぅんッ。晶ちゃんのコネは広いですなぁ」 「存外に狭い気もするがな。そう言う訳で、あまり期待はするなよ」 「え?それって、どういう事?渡りを付けてくれるっていうの!?」 「ここまで話しておいて無理だから諦めろ、では無体だろうからな」 「もしもOKだったら、一緒に名物でも食べ合いっこしますの~♪」 但しロッテ達が食事機能を得たのはあくまで“実験”だ。ここが肝要。 無論、了承してもらえるか等分かった物ではない。あくまでも礼儀だ。 もし話が進んだとしても、私の手を通るかは分からないしな……そして 未曾有の蕎麦タイムは唐突に訪れ、存分に私達を蹂躙していった……! 「……けふ、貴様が彼処で断れれば!こんな事にはならなかった!」 「そ、そうは言ってもあの勢いはなかなか……けぷ、難しいですぞ」 「あぅ~……もうおなか一杯ですの~……クララちゃん、大丈夫?」 「ボクはキャパシティがそろそろ限界かな……アルマお姉ちゃん?」 「風味があって美味しかったですね~♪ごめんなさい、ミラさん達」 「う、羨ましくなんて無いんだから!本当、なんだから……うぅ~」 とどのつまり、アルマ以外は腹一杯になってしまい暫く動けなかった。 アルマめ、明らかに普段の倍近く平らげたが……蕎麦に心躍ったのか? そして私達は重い腹を引きずって市街周遊バスに乗り、郊外の浴場へと 赴いた。チケットを買って受付で事前説明をし、神姫と共に入浴する。 「……はぁ~♪サウナと露天風呂、如何です。温泉じゃないですけどっ」 「遠くに見える八ヶ岳は綺麗で、風呂もそこそこ良い。お前達はどうだ」 「ひからびちゃいます……いえ、神姫だからひからびはしないんですが」 「熱気浴は、精密機械のボクらには初めての経験なんだよ。大丈夫かな」 「だいじょぶ!何度かきた私達が保証するわよ!この通……あうッ!?」 「イリンさん!?“簀の子”の隙間に脚引っかけたら危ないですの~!」 慌てて私と灯はイリンを抱き起こす……こら貴様、見るんじゃないッ!? 汗だくな乙女の肌など見るな!ほら、あっちを向いていろッ!全く……。 まぁ灯の言う通り、風呂が浅間や白骨等の“温泉”でないのは残念な所。 しかし大自然を望める場所での風呂と言うだけで、私達には十分だった。 「冷却水は十分に補給しろよ、お前達や。オーバーヒートしたら、事だ」 「は~いですの~♪んぐ、んぐ……んぐっ。ぷぁ~、生き返りますの♪」 「なんかロッテちゃん、親父っぽいわよ?でもお風呂上がりの水だしね」 「水分で“生き返る”感覚、っていうのがよく分かるんだよ……はふぅ」 「はぁ~……ティニアさん、この後はパイプオルガンなんでしたっけ?」 遠くに霞む山並みを眺めつつ皆で水分を取り、ついでに気合いの入った 衣装に着替える。私は東京から持ってきた、一張羅の白い衣装を着る。 まさか着る事になるとは思わなかったが……ロッテ達“私の妹達”にも 秋物の試作品を改造した、少々深い色合いの“お揃い”を着せてやる。 灯も黒っぽいドレスに着替え、ミラ達もそれに倣って“お色直し”だ。 「お邪魔しますの~……うわ、おっきいですの……ッ!?」 そしてパイプオルガンのあるホールに入った時……私達の誰もがロッテと 同じ感想を抱いた。それは“灯の妹達”である三人にしても同じらしい。 灯は無粋なボイスチェンジャーを、着替えた時から外している。それは、 神姫に荘厳で純粋な音を聞かせたいという、灯なりの思いやりの様だな。 「成程、これが現物か……音はCD等で時々聞くが、ナマは初めてだ」 「そろそろ始まるみたいですな、神姫の皆は吃驚しない様……お願い」 「あ、はい姉様……皆、吃驚するわ──────ッ!?来たぁ……!」 「う、わぁ……!躯がビリビリ痺れて、音が全身に飛び込んできます」 「く……神姫の素体には、なかなかヘヴィな神の音なんだよ……!!」 「でもこれ……とっても、とっても……綺麗な音ですの……ふふっ♪」 ──────神々しい音で皆、浄められていく気がするね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1133.html
武装神姫のリン オリジナル武装・技解説 このページでは本編に出てくるオリジナル武装(元ネタがあるものは割愛)と燐が戦闘時に使用するエアリエル技について説明するページです。 今更感があるかもしれませんが、参考までに。 もちろん妄想の産物なので細かい所は気にしないでいただけるとありがたいです。 武装 1,N-01およびN-02 コレは本編中で市販されたという設定の第1弾の強化パーツであり、アーンヴァルについては01、ストラーフには02が対応する。 01はアーンヴァルの機動力を殺さないレベルでの総合的な攻撃力アップを目指した。 その結果武器としてはレーザーライフルの半分ほどの長さ、重量でありつつも連射もある程度可能なレールガン。 その威力は直撃であればシールドや、頑強と評判のハウリンやマオチャオの装甲にもかなりのダメージを与えることが可能である。 レールガンとほぼ同じサイズのユニットを持つ大型ライトセイバー。これは刃が非常に大きいことからランスとして使用し、高々度からの急降下による一撃離脱戦法も十分に可能である。刃部分の重さはゼロなので意外と扱いやすいのも特徴である。 そして頭部センサー用の大型アンテナユニットが同梱で、これにより索敵能力、照準制度の上昇が望める(上昇の程度はその個体に左右されるためそれを発売までに数値化して発表するには至らなかった) 索敵、照準制度上昇を求めるだけであれば単純なゴーグル系パーツも販売されているが、あれを装備すると見た目が損なわれてしまうと考えるユーザーも少ないわけでは無かったため意外と評判は良いらしい。 N02はストラーフの重装備を支えつつもアーンヴァルやツガルと言った常時飛行の可能な神姫に対して広いステージで対抗するというコンセプトで開発された。 パーツの大部分を占めるのは背部ハードポイントに接続する飛行ユニットで、正に悪魔の翼を模したような大型のフレキシブルバインダーにその基部の小型ながら出力効率の良いバーニアで常時飛行とまでは行かなくとも、10秒~120秒の滞空および飛行が可能(バーニアの出力設定で時間は変動)になっている。 なお、こお装備は基本的に背部ユニットと合わせて使うことが推奨されているが素体状態の拡張マウントに直接接続することももちろん可能でありその際は重量も軽くなるため1,2~1,5倍に滞空時間が延びるというデータが取れている。 ストラーフの戦闘能力はかなり高い水準で安定しているので武装についてはリーチを伸ばすこととチーグルのマニピュレータで扱うことの出来る大型武装ということで鎌と薙刀の2パターンの形状を取ることが出来るポールウェポンが付属している。 ただ形状を変更すると刃の向きが180度変わるのだが開発当初考えられていた基部の回転軸が強度(戦闘ではチーグルのパワー力ずくでたたきつける様に扱うことが多くなるであろうと開発者は予想)確保の問題からオミットされたために変形後は一旦持ち替えなくてはいけないと言う少々面倒な点も存在する。 2,燐専用、対空ユニット「焔」 一方こちらは上記の「N-0Xシリーズ」の開発メンバーでもあった藤堂亮輔が所有する神姫-個体名「リン」-専用に藤堂亮輔が開発(パーツ代も彼の自己負担であり、パーツの組み立てはすべて彼自身が行ったらしい)した「リン」専用の機動戦用モジュールであり、スペックの全てが彼女のパーソナルデータに基づいて調整されている。 そのために当たり前ではあるが、彼女以外の神姫が装備してもまず100%の能力を引き出せないシロモノとなっている。 その構成はサブアームの基部の肩に当たる装甲版の代わりにN-0Xシリーズより大型で最大出力も高い(ただ、単純なエネルギーの変換効率で言えばN-0Xの方が上である)バーニアユニットとエンジンの一体型のユニットを装備し、また比較的大型のバインダーを装備することによって飛行する神姫にも容易に接近することが可能になっている。 ただし空を自由に飛ぶ訳ではなく距離を開けられて相手に射撃をさせない様に、そして最終的には自分の間合いまで飛び込むことのみを目的にしているため普段は地に足を付けて戦うことになる。 ただ、バーニアおよびエンジンの出力故にバーニアを瞬間的に噴かせて緊急回避などを行うことも十分に可能である。 ただ、N-0Xシリーズの様に滞空・飛行が可能なパーツは他にもあるにも関わらずこの様な「使用状況が特殊故に汎用性も無く、機体バランスを崩すピーキーなチェーン」の武装を彼及び「リン」が必要としたのかはまだ本編で語られていないが、そう遠くない時期にお見せすることが出来ると思う。 エアリエル技 1,「裂空(れっくう)」 リン-燐-がマスターの藤堂亮輔を侮辱されたことにより激高した結果行った行動であったが、それは相手の意表を完全に突き彼女の勝利を決定づけたモノである。 当時は技と言うよりは『火事場のクソ力』であったがその後の訓練により習得している。 基本的にはわざと相手に隙を見せることにより相手が攻撃準備に入るために足を止める瞬間を作りだし、そして強靱な脚部およびサブアームのばねを生かして瞬時に相手の背を取る技である。その後の攻撃行動は厳密には「裂空」と言う技ではないということは多分本人およびそのマスター達以外は知らないものと思われる。 2,「隼(はやぶさ)」 これが燐の技の内で最初に披露された攻撃技であり、最近は裂空から繋いでフィニッシュに用いられることが多い。 技としては空中で身体のバランスをわざと崩して回転しその遠心力を加えた後ろ回し蹴りを放つものである。 その軌道は予測できず、上からかかと落としの様に放つこともそのまま水平に繰り出すか…その軌道は食らう直前ならなければ分からない。 3,「裂空・雅(れっくう・みやび)」 裂空は基本的に『受け身』の技で、一方こちらは最初から『攻め』を考えられ考案された技である。 ただし、使用時に脚部、椀部にかかる負担が尋常ではないためにうかつには使用できない上、失敗すれば自分が負けると言う正に「必殺」の技。 動作としてはまず、基本装備であるグレネードランチャーを放り投げ、パイソン357マグナムで撃ち抜くことで爆発させる、その爆風に乗って(その際、もちろん己にも多少のダメージを負う)敵の至近距離まで瞬間的に接近。 そのまま相手が己の行動に驚き無防備であれば空中で回転して隼を。相手が反撃に出る場合は無理矢理にサブアームを地面に突き立てたり(これは公式戦で使用された唯一1回の場合)して軌道を変更し、そのまま片腕・片足のみで行うハンドスプリングやバク転で相手の背後を取ると言うものである。反撃に出る相手もほぼ確実に渾身の一撃を放ってくることから博打性の高い技であるのも確かであるため、よほどの正念場(特に相手と何かしらの因縁や関係がありどうしても勝たなくてはいけない場合)でない限り燐がこの技を使うことは無い。 その技としての特殊性故に練習を行うことはほぼ不可能(もちろんバーチャル空間でのシミュレーションは可能だが)であり、技としての完成度が低いのが現状である。 戻る